第19回遺伝子実験施設セミナー「小分子RNAによる生体制御とゲノム編集」

疾患エクソソームの機能解明と診断・治療への応用 

   独立行政法人 国立がん研究センタ−研究所

   分子細胞治療研究分野 分野長  落谷 孝広 

 non-coding RNAの一種である細胞内のマイクロRNAは、生命現象の微調整役として多くの遺伝子やタンパク質の発現制御に関与している。最近、細胞外に分泌されるタイプのマイクロRNA(exRNA)に注目が集まるようになった。たとえば、がん患者と健常者とでは分泌型マイクロRNAのプロファイリングに大きな違いがみられ、その違いががんの新たなマーカーとして診断や治療に応用できる可能性が示唆されている。分泌型マイクロRNAは体液中を循環するが、エクソソームの様なナノサイズの小胞顆粒に包埋されるため、多くの消化酵素が存在する血漿・血清中でも安定である。特にがんなどのヒトの病態によってその発現量や種類が大きく変化するため、血液を利用した非浸襲的な診断用バイオマーカー(Liquid biopsy)としての活用が期待される。一方でエクソソーム中のマイクロRNAの発見は、エクソソームを介した細胞間マイクロRNA移送による新たな情報伝達機構としての研究展開も魅力的であるため、細胞外にホルモンの様に放出される分泌型マイクロRNAやエクソソームそのものが、がんの転移に果たす役割が注目されている。本講演では、最近の疾患エクソソームの理解と診断・治療への応用の可能性を展望する。