第4回生命資源研究・支援センターシンポジウム
「マウスゲノム多型に基づく多因子表現型の解析」
国立遺伝学研究所 系統生物研究センター 哺乳動物遺伝研究室 教授
熊本大学 生命資源研究・支援センター 技術開発分野 客員教授
城石 俊彦
生活習慣病などのありふれた疾患の発症には、一つ一つの遺伝的効果の少ない多数の遺伝子因子と環境因子の相互作用が原因となっていると考えられている。ヒトを対象に、それらの遺伝子因子を検出・同定することは困難を極めている。MSM/Ms系統は、国立遺伝学研究所において樹立された日本産野生マウス由来の近交系統である。この系統は、通常使用される標準的な実験用マウスと比較した場合、大きなゲノム多型と表現型多様性があり、発癌感受性やゲノムインプリンティング研究などのさまざまな分野ですでに幅広く利用されている。我々は、MSM/Ms系統を対象にしたゲノム解析により、大量のゲノム多型情報を収集している。また、標準的な実験用マウス系統であるC57BL/6Jの遺伝的背景にMSM/Ms系統の各染色体を導入したコンソミック系統を開発してきた。これらのマウス亜種間コンソミック系統とゲノム多型情報に基づいた遺伝解析により、ありふれた疾患に関与する複雑な遺伝システムの理解に新局面が開かれる可能性がある。