第15回生命資源研究・支援センターシンポジウム

『放射線被ばく線量評価のためのバイオドジメトリ〜歯エナメルを用いた電子スピン共鳴(ESR)法を中心として〜』 

  熊本大学 生命資源研究・支援センター RI実験分野 助教 島崎 達也

 予期せぬ放射線事故の際には、正確な線量評価が不可欠であり、被ばく線量が小さい場合でも、線量測定の結果が社会から強く求められることが、東京電力福島第一原子力発電所の事故で改めて示された。このような場合の被ばく線量評価のために、被ばく者の身体から得られるバイオサンプル(血液、尿、皮膚、歯、人精子など)を利用して、被ばく線量推定を行わざる得ない場合がある。このことをバイオドジメトリ(Biodosimetry, Biological dosimetry)という。バイオサンプルとして歯エナメルを用いた電子スピン共鳴(ESR)被ばく線量測定は、放射線により生成されるラジカルを計測することより線量評価を行うため、線量計を所持しない一般公衆であっても、生涯にわたる蓄積被ばく線量を個々に求めることができる。放射線事故の際の、推定ではない実際の被ばく線量を評価する方法として最も適した方法である。現在、これまで被ばく線量評価が困難と見られている低線量被ばくが予想される遠距離で長崎原爆に被爆した集団や福島第一原発事故による福島県住民の被ばく線量推定への適用を目的として被ばく線量評価の基礎研究を継続している。