第5回生命資源研究・支援センターシンポジウム

「誘導性腫瘍形成モデルを用いたがん幹細胞の解析」 

  慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所 教授

  熊本大学 生命資源研究・支援センター

         バイオ情報分野 客員教授 佐谷 秀行 

 がんは永続的に増殖し続けることのできる細胞の集塊であると信じられていた。しかし近年、がん組織は少数の自己複製能を持ち半永久的に子孫の細胞を作り続けることのできる細胞と、最終的には増殖能を失う大多数の細胞の二群から構成されており、正常の組織幹細胞と前駆細胞のような関係ががん組織にも存在すると考えられつつある。私達は成人マウスの各種組織幹細胞あるいは前駆細胞に遺伝子を導入することにより腫瘍を誘導するというモデルを構築し、それを駆使することにより、がん幹細胞とはどのような性質を持ち、発がんおよびがんの維持にどのような分子が関わるかについて多面的な解析を行っている。シンポジウムではこれらの腫瘍形成モデルにおけるがん幹細胞の同定とその性質について述べ、特に分化との関係や治療抵抗性について最近のデータを示したい。またこれらの所見から、今後どのようにがん治療戦略が変化するかについて討論したい。