第12回遺伝子実験施設セミナー「クマダイで育った若きリーダーたち」

「がん分子標的治療薬開発におけるトランスレーショナルスタディ」 

   近畿大学 医学部 内科学講座 腫瘍内科部門 准教授 岡本 勇 

 癌治療開発において分子標的治療は最もホットな領域であると言って過言ではない。この背景として、近年臨床導入された、いくつかの分子標的治療薬が、実際の癌治療の現場においてこれまでの標準的治療を凌駕しあるいはそれに迫る臨床効果を示していることが挙げられる。分子標的治療薬の登場は単に良い薬が出て来たということだけではなく、これら新たな薬の開発が20世紀後半より急速に進歩を遂げた癌分子生物学の成果そのものであることに大きな意味がある。分子標的治療薬剤の臨床導入にあたって、臨床側からのclinical questionが基礎研究により解決され、その新しい知見が臨床現場での治療指針決定に用いられるというストーリーは癌研究に少しでも携わったものであれば誰でも興奮を覚えずにはいられない側面であろう。本セミナーにおいては、EGFR-targeted therapyを中心に臨床的及び基礎的両面から得られている知見を私どもの研究成果を含めて紹介させて頂き、今後基礎と臨床の橋渡し的研究(トランスレーショナルスタデイー)がどのように展開すべきかに焦点をあて議論したい。