第21回遺伝子実験施設セミナー「老化と寿命」
健康長寿の実現を目指した老化研究の推進
公益財団法人先端医療振興財団先端医療センター センター長
鍋島 陽一
2015年、本邦における平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳であり、世界で最も長寿である。健康長寿の実現は有史以来、人類の最大の関心事の一つであり続けた。この20年間の研究でカロリー制限による老化遅延、寿命延長のメカニズムが種を越えて確認され、またインスリン様増殖因子、サーチュイン、mTORなどの老化制御遺伝子が発見され、同時にクロトー変異マウスなどの老化解析モデルシステムが開発されたことにより細胞、臓器レベルでの老化に関する研究は著しく進展した。また、個体老化における細胞老化の位置づけについても次々に興味深い事実が報告されつつある。最近の老化研究の進歩は、ヒトの老化を遅らせ、寿命を延ばすことも夢ではないことを示唆しており、今や健康長寿は実現可能な目標となっている。
本講演では、老化研究の最近の進歩を概説し、我が国における老化研究推進の重要性を指摘したい。次いで、α-klotho研究の最近の進展、即ち、α-Klothoの生理機能、分子機能に関する新たな知見、α-klothoの分子病態メカニズムの解明の進展、老化研究におけるKlothoの位置づけについて紹介する。
これらの話題提供を通して老化メカニズムの解明ならびに老化を制御することにより多くの老化関連疾患の発症を遅らせ、進展を抑えることの重要性について議論したい。