第17回遺伝子実験施設セミナー「バイオリソース最前線・パート2」

線虫遺伝子機能解析における変異体の位置付け 

   東京女子医科大学 医学部第二生理学教室 教授

   東京女子医科大学 統合医学研究所 所長  三谷 昌平 

 線虫は、体長が1mm程度の最も単純な構造を持つ多細胞モデル生物として多用されている。雌雄同体で増殖できるが、雄も存在して交配が可能なこと、生活環が3日程度であること、大腸菌を餌として飼育できること、凍結保存が容易なことなど、遺伝学的な解析に有用な生物である。細胞系譜や電子顕微鏡レベルの形態の記載が充実していること、ゲノム配列が解読されていること、トランスジェニック解析やRNAi解析も容易である。

 我々は、ナショナルバイオリソースプロジェクトを通して約5,000系統の欠失変異体を公開し、世界の研究者に提供している。線虫の欠失変異体は、遺伝子機能解析を行う上で貴重なリソースとして使用されており、多くの研究室ではRNAiやトランスジェニック法と併用して、表現型解析をベースにした遺伝子の働きの詳細な研究を行っている。

 本セミナーでは、遺伝子機能解析において、これらの手法の組合せの典型例をベースにして、遺伝子機能解析において、コンディショナルKO法やCALI(Chromophore-Assisted Light Inactivation)などを加えることにより、時間空間的な特異性を高める手法について紹介したい。