第17回遺伝子実験施設セミナー「バイオリソース最前線・パート2」

「NBRP「ニワトリ・ウズラ」の取り組み」 

〜鳥類バイオリソースの整備と活用に向けて〜 

   名古屋大学 大学院生命農学研究科 動物遺伝制御学研究室 教授

   名古屋大学 大学院生命農学研究科 附属鳥類バイオサイエンス研究センター センター長  松田 洋一 

 ニワトリ・ウズラは、鳥類を代表するモデル動物として、ライフサイエンス研究に不可欠な生物資源である。しかし、我が国における、研究用リソースとしてのニワトリ・ウズラの保存・供給体制は脆弱であり、多くの貴重なリソースが国内に散在し失われつつある。この度、第3期NBRP「中核的拠点等整備プログラム」の新規課題として採択されたNBRP「ニワトリ・ウズラ」では、名古屋大学の鳥類バイオサイエンス研究センターが中核的拠点を形成し、質と量ともに世界最高水準のニワトリ・ウズラリソースの保存と育成、ならびに安定供給を実現することによって、鳥類を用いたライフサイエンス研究の基盤を補完し、研究者コミュニティへのさらなる貢献を目指して事業を開始した。

 当センターでは、現在、ニワトリの野生原種である赤色野鶏、高度近交系、長期閉鎖系、疾患モデル系および育成系を含む20を超えるニワトリ系統を維持し、ニホンウズラでは突然変異系統を含む長期閉鎖系7系統を保有し、提供が可能である。なかでも高度近交系5系統は、マイクロサテライト(MS)マーカーなどを用いた遺伝モニタリングによって、遺伝的均質度が非常に高いことが確認されており、質的にも国際競争力を兼ね備えた世界屈指のニワトリリソースとなっている。現在、目標として掲げる、1)新たなリソースの収集・保存・育成、2)遺伝モニタリングによるリソースの高品質化、3)遺伝子導入・遺伝子改変ニワトリ・ウズラの作出、4)ニワトリ・ウズラリソースに関するデータベースの構築とリソース情報の高度化、に向けて展開中の事業について紹介したい。