第18回遺伝子実験施設セミナー「バイオリソース最前線・パート3」

メダカバイオリソース 〜脊椎動物のin vivoモデルを目指して〜 

   基礎生物学研究所 バイオリソース研究室 准教授  成瀬 清 

 メダカは実験動物として100年をこえる歴史がある。脊椎動物におけるメンデル遺伝の確認、限性遺伝の発見、脊椎動物で初めての機能的人為性転換、魚類で初めての遺伝子導入法の開発などメダカを用いた研究から多くの興味深い現象や技術が開発されてきた。2002年より始まったナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)でもメダカは当初からその対象リソースとして選定され、メダカバイオリソースの収集・保存・提供事業は既に12年目を迎える。現在では近交系、変異体、遺伝子導入系統、野生系統などの500系統をこえるライブリース、cDNA/BAC/Fosmid等のゲノムゲノムリソース、割球移植や体節の移植などの胚操作に不可欠な孵化酵素の3種類のリソースを提供している。さらにゲノムブラウザー、メダカ形態アトラス、野生集団・近縁種の系統情報、遺伝子発現プロファイル、実験プロトコール等のデータベースを合わせ利用者に提供することでNBRP Medakaはメダカを用いた研究に不可欠な統合的リソースプロジェクトとして成長している。近年開発されたTALEN/CRISPR-CASシステムによるゲノム編集技術もすでに実用化され、メダカは順遺伝学的解析に加え、逆遺伝学的解析も可能となった。今回のセミナーでは個体レベルで様々な生命現象を解析できるin vivoモデルとしてのメダカの現状について研究例を交えてご紹介したい。