第12回遺伝子実験施設セミナー「クマダイで育った若きリーダーたち」
「Auroraが照らした染色体分配の仕組み」
財団法人 癌研究会 癌研究所 実験病理部 部長
広田 亨
遺伝情報を担う染色体の正確な継承は、生命体の恒常性維持のための基本である。染色体が不均等に分配される病的状態は、多くの悪性腫瘍にみられる特性であり、その病態と緊密に関連していると考えられている。従って、染色体分配の仕組みの理解は重要課題であり、「染色体」そのもの、及び「動原体」「紡錘体」といった染色体の動きをコントロールする構造体の構造と機能の究明は欠かせない。細胞分裂は一連のタンパク質のリン酸化修飾によって進行するが、佐谷研究室で特に興味を寄せてきた分裂期キナーゼのAurora Bが、染色体の形成から分離のプロセスで鍵となる機能を有していることが明らかになってきた。本講では、これまでの観察結果をご紹介し、コンデンシン等の染色体関連因子の分子メタボリズム(クロマチンへの結合と解離)の制御、及び、染色体動態の制御起点である動原体の制御、という多彩な機能を担うAurora Bの重要性を浮き彫りにしたい。