第20回遺伝子実験施設セミナー「マイクロバイオーム」
NGS解析から見えてきたヒト腸内マイクロバイオームの新実像
早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 教授
服部 正平
人体には数百種・数百兆個の常在菌が生息している。これら常在菌の住処は口腔、胃、腸、皮膚など全身にいたるが、その種類や菌数、組成比は生息部位によって異なり、それぞれ固有の細菌叢(マイクロバイオータ)が形成されている。とくに、腸内細菌叢は宿主の生理との関連性から古くから研究されてきた。しかし、その菌種数の多さ、難培養性細菌の存在、個人間での高い多様性などが理由で、その全体像は長く不明のままであった。ところが、近年における次世代シークエンス技術(NGS)の革新的な進歩により、その総体ゲノム(マイクロバイオーム)を丸ごと調べるメタゲノム解析が可能となった。また、2008年には国際コンソーシアムIHMC(International Human Microbiome Consortium)が設立され、マイクロバイオーム研究が国際的に推進されるようになった。これらの研究によって収集された大量の細菌や遺伝子情報から、その精密な全体構造にくわえて、腸内細菌叢とヒトの病態や生理の関係がこれまでの想像を遥かに越えて密接なことが明らかとなってきた。本講演では、腸内細菌叢の生態学的・機能的特徴など、演者のグループが進めているNGS-basedメタゲノム研究を紹介する。