第18回遺伝子実験施設セミナー「バイオリソース最前線・パート3」
遺伝子からトマトをデザインする
筑波大学 生命環境系 生物圏資源科学専攻・蔬菜花卉学分野担当 教授
江面 浩
トマトは、農作物としては新しい品目であるが、世界で最も生産されている。トマトの世界的な栽培地域の拡大は、様々な環境に適応した品種開発を可能にした育種技術の貢献が大きい。トマトは、果実のモデル植物としてゲノム解読が行われ、ゲノム情報が集積している。加えて、各種ツール開発も進展している。このような背景から、果実の重要形質発現に関する分子機構の解明と遺伝子の単離が進んでいる。演者等はトマト研究のモデル品種であるマイクロトムを基盤に変異体リソースの開発、ゲノム情報解読、変異体の効率的選抜技術(TILLING技術)、高効率形質転換技術、トマトの重要育種形質に関する変異体の選抜と原因遺伝子の単離技術の開発に取り組んできている。演者等は、トマトの重要育種形質の中で、果実の日持ち性、甘さ、着果性、機能性物質蓄積に関する研究を進めて来た。それらの中から、遺伝子を見て果実の日持ち性と着果性をデザインする研究事例を紹介する。日持ち性は、流通消費段階のロスをなくし、食料増加に貢献するだけでなく、果実の完熟収穫を可能とし、品質向上にも貢献する形質である。着果性は、冬季及び夏季のトマトの生産性を左右する重要な形質である。