第17回遺伝子実験施設セミナー「バイオリソース最前線・パート2」
日本で生まれたアサガオバイオリソースの整備状況と将来への展望
九州大学 大学院理学研究院 生物科学部門 助教
仁田坂 英二
アサガオ(Ipomoea nil)は熱帯アメリカ起源の植物で汎世界的に分布しているが、日本においてのみ園芸化され、アサガオに見えないような形態の変異体や直径24cmを超える花を付ける品種も育成されている。メンデルの法則の再発見以降、遺伝学の研究材料として、また日長条件に鋭敏に反応して花芽を分化する特性から生理学分野の材料としても利用されてきた。現在では、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)によって、突然変異系統や各種DNAクローンの整備が進められている。アサガオは他のモデル植物が備えている、遺伝学や分子生物学的解析に適した特性に加え、日長条件による植物体サイズの調整が容易な点、突然変異誘発や遺伝子クローニングに利用できる内在のトランスポゾンの存在、花色や形態に関する豊富な変異体、高い自殖性と少数の起源による非常に均一なゲノム等の特徴も備えている。現在、これまで欠けていたゲノム配列情報も解読が進められており、近縁種のサツマイモへの応用も期待されている。このセミナーではアサガオで整備されつつある各種リソースと、これらを利用した研究の実例について紹介したい。