第16回遺伝子実験施設セミナー「バイオリソース最前線」

マウスリソースの品質と付加価値の向上 

   理研バイオリソースセンター・実験動物開発室 吉木 淳 

 近交系マウスは、人類が100年かけて育成してきた理想的な哺乳動物の実験系で、最新の遺伝子操作が加えられて、遺伝子機能の解明、新薬や病気の治療法の開発などの生命科学研究に大きく貢献しています。我々は、平成14年度から文部科学省のナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の実験動物マウスの中核機関として5000系統のマウスを収集し、微生物学的な清浄化、遺伝品質の検査を施して、世界中の研究者に提供しています。今日の遺伝子操作マウスを用いた研究では、複数のノックアウトマウスとトランスジェニックマウスを交配することにより、特定の発生時期の限局した組織や細胞で遺伝子の発現制御を行い、発生や疾患の分子機構を解明する実験が行われています。こうした精緻な動物実験系を構築する為には微生物学的に統御され、導入遺伝子および遺伝背景が充分に吟味されたマウス系統を用いることが不可欠です。さらに最近では、全遺伝子を対象にノックアウトマウスの網羅的な表現型を解析して遺伝子機能のアノテーション情報としてマウスと共に整備する国際プロジェクト(International Mouse Phenotyping Consortium)が始まりました。マウスは品質の向上と特性情報等の付加価値が加えられ益々有用な実験動物となっています。