第4回生命資源研究・支援センターシンポジウム
「癌の浸潤・転移抑制創薬を目指す」
慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門 教授
熊本大学 生命資源研究・支援センター バイオ情報分野 客員教授
佐谷 秀行
癌細胞は多段階のステップを踏んで転移することが知られている。そのステップは、癌細胞が原発巣の母集団から離れ、周囲組織へ浸潤することから始まる。近年、この序盤のステップに、上皮間葉転換(EMT)が関与することが明らかになってきた。EMTの進行と維持において、細胞表面に存在する接着分子と腫瘍細胞周辺の微小環境の相互作用が重要な役割を果たす。CD44は細胞外マトリクスの成分であるヒアルロン酸と主に結合する接着分子であり、その接着機能は癌細胞のEMTに極めて重要であることが明らかになった。講演では、CD44を介した細胞浸潤の分子機構について解説し、それに基づいて私たちが最近行っている癌浸潤転移阻害剤の創薬アプローチについて述べてみたい。