GTC On Line News No.721

2006年 7月12日
=== 遺伝子組換え生物等規制法について・Part18 ===
    〜〜〜 蛋白性毒素に係る遺伝子の定義について 〜〜〜
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 文部科学省のホームページに、平成18年6月28日付けで、「二種省令別表第一第一号ト」の解釈について、という報告が掲載されていましたので、お知らせします。
(研究振興局 ライフサイエンス課 生命倫理・安全対策室)

 大臣確認実験の範囲を定めた「二種省令」別表第一(第四条関係)の中に、

第一号ト
 供与核酸が、哺乳動物等に対する半数致死量が体重一キログラム当たり百マイクログラム以下である蛋白性毒素に係る遺伝子を含む遺伝子組換え生物等(宿主が大腸菌である認定宿主ベクター系を用いた遺伝子組換え生物等であって、供与核酸が哺乳動物等に対する半数致死量が体重一キログラム当たり百ナノグラムを超える蛋白性毒素に係る遺伝子を含むものを除く。)

という文章があります。ここで、「蛋白性毒素に係る遺伝子」という言葉を「蛋白性毒素に関係がある遺伝子」と解釈した場合、例えば、毒素蛋白質の発現調節遺伝子又は遺伝子配列、レセプター認識にのみ関わる蛋白部分、分泌シグナルなども対象となり、明らかに毒素活性に関わらない遺伝子又は塩基配列についても大臣確認が必要ということになります。

 そこで、このような混乱を避けるため、「二種省令別表第一第一号ト」の範囲を以下のように定義されました。
定 義:「蛋白性毒素に係る遺伝子」を「蛋白性毒素の毒素活性を持つアミノ酸配列をコードする領域を含む遺伝子」と定義する。
 以上の定義により、蛋白性毒素遺伝子の一部を用いたり、変異を入れた遺伝子を用いたりする実験において、実際に産生されるタンパク質に毒素活性がなければ「二種省令別表第一第一号ト」に該当しないことになります。具体例が記載されていますので転記します。

解釈例1:シガトキシン(シガ毒素)のようなAB毒素の場合、改変していない蛋白性毒素のBサブユニットをコードする遺伝子部分又はそれを含む遺伝子配列は、発現された蛋白に毒素活性がない限り、「蛋白性毒素に係る遺伝子」とは解釈されない。

解釈例2:蛋白性毒素遺伝子の毒素活性を持つアミノ酸配列をコードする領域への欠損あるいはアミノ酸置換等の遺伝子導入により毒素活性を失わせ、かつ、復帰変異の無い事を確保しつつ使用する遺伝子は「蛋白性毒素に係る遺伝子」とは解釈されない。

解釈例3:変異毒素蛋白質の毒素活性が野生型より弱い場合であっても、毒素活性がある場合は、「蛋白性毒素に係る遺伝子」と解釈される。