GTC On Line News No.692*******

2006年 4月20日

=== 遺伝子組換え生物等規制法について・Part14 ===
    〜〜〜 改正二種告示について 〜〜〜
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 今回は、平成18年2月6日付けで一部改正された「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令の規定に基づき認定宿主ベクター系を定める件」(研究開発二種告示)について、主な変更点をピックアップしながら紹介します。

 改正二種告示(PDF)は、下記ホームページに掲載されていますのでご確認下さい。
  http://www.medphas.kumamoto-u.ac.jp/koho/center/index.html#dna

(1)認定宿主ベクター系
 「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」(研究二種省令)の第二条に、「認定宿主ベクター系」の定義が書いてあります。

第二条
 十三 認定宿主ベクター系 特殊な培養条件下以外での生存率が低い宿主と当該宿主以外の生物への伝達性が低いベクターとの組合せであって、文部科学大臣が定めるものをいう。

 ここで言う「文部科学大臣が定めるもの」のリストが、二種告示の別表第1に示してあります。今回の改正では、ほとんど変わっていません。通常の組換えDNA実験で使用される大腸菌及び酵母菌は、この認定宿主ベクター系(B1)に該当します。また、その中でも特に安全性の高いものは特定認定宿主ベクタ ー系(B2)になります。特定認定宿主ベクター系(B2)を用いる場合、拡散防止措置の区分を1ランクレベルダウンすることが出来ます。

(2)実験分類の区分ごとの微生物等
 研究二種省令第三条の表で定めてある「実験分類」クラス1〜クラス4に関して、各区分ごとの微生物等のリストが別表第2に示してあります。今回の改正で、項目の並べ方や、記載内容にいくつか変更があります。

<クラス1>
 微生物、きのこ類及び寄生虫のうち、哺乳綱及び鳥綱に属する動物(ヒトを含む。以下「哺乳動物等」という。)に対する病原性がないものであって、文部科学大臣が定めるもの並びに動物(ヒトを含み、寄生虫をのぞく。)及び植物。
   ・・・これまで、原核生物、真菌、原虫、寄生虫に関して、クラス2やクラス3に掲げるもの以外のものとした後に「(新たに哺乳動物等に対する病原性が見出されたものを除く。)」という記載がされていたのが、今回の改正で「(哺乳動物等に対する病原性がないものに限る。)」という記載に変わっています。また、Bacterial viruses、Fish viruses、Insect viruses、及び Plant virusesに関する記載が変わっていますので、関係者は再確認をお願いします。

<クラス2>
 微生物、きのこ類及び寄生虫のうち、哺乳動物等に対する病原性が低いものであって、文部科学大臣が定めるもの。
   ・・・真核生物を宿主とするウイルス及びウイロイドに関して、これまで「次に掲げるもの(ワクチン株を除く。)」と記載されていたものが、「次に掲げるもの(承認生ワクチン株を除く。)」に変わっています。また、Influenza virus(高病原性株を除く。)に関して、宿主の記載が無くなりました。さらに、Calicivirusという名前が消えHepatitis E virusが単独で表記されるなど、記載方法が変わったウイルスもかなりあります。

<クラス3>
 微生物及びきのこ類のうち、哺乳動物等に対する病原性が高く、かつ、伝幡性が低いものであって、文部科学大臣が定めるもの。
   ・・・真核生物を宿主とするウイルス及びウイロイドに関して、これまで「次に掲げるもの(ワクチン株を除く。)」と記載されていたものが、「次に掲げるもの(承認生ワクチン株を除く。)」に変わっています。また、Influenza virusの高病原性株に関して、宿主の記載が無くなりました。

<クラス4>
 微生物のうち、哺乳動物等に対する病原性が高く、かつ、伝幡性が高いものであって、文部科学大臣が定めるもの。
   ・・・真核生物を宿主とするウイルス及びウイロイドに関して、これまで「次に掲げるもの(ワクチン株を除く。)」と記載されていたものが、「次に掲げるもの(承認生ワクチン株を除く。)」に変わっています。

(3)自立的な増殖力及び感染力を保持したウイルス及びウイロイド
 研究二種省令別表第一には、「大臣確認実験の範囲」が記載されています。

別表第一
 一 微生物使用実験のうち次のイからチまでに掲げる遺伝子組換え生物に係るもの
  へ 自立的な増殖力及び感染力を保持したウイルスまたはウイロイド(文部科学大臣が定めるものを除く。)

 ここで言う「文部科学大臣が定めるもの」について二種告示の別表第3に示してあるのですが、今回の改正で大幅に変わりました。改正前と改正後の全文を転記します。

[改正前]
別表第3(第4条関係)
 1 Vaccinia virus 以外のウイルスのワクチン株
 2 Retrovirus (Human retrovirusを除く。)
 3 Baculovirus
 4 Plant viruses

[改正後]
別表第3(第4条関係)
 1 Vaccinia virus 以外のウイルスの承認生ワクチン株(当該承認生ワクチン株を改変せずに使用等をする場合に限る。)
 2 Retrovirus (Human retrovirusを除く。)
 3 Baculovirus
 4 Plant viruses
 5 ファージ及びこれらの誘導体(別表第1に掲げる宿主のうち細菌を自然宿主とし、哺乳動物等に対する病原性を付与しないものに限る。)

 実は、改正前の2種告示には、「ファージ」あるいは「Bacterial viruses」に関する記載は全くありませんでした。記載が無いと言うことは、使用に際して大臣確認が必要であるということを意味します。しかしながら、大腸菌に感染するファージが哺乳動物等に対する病原性を持っていないことは明らかであり、「組換えDNA実験指針」においては機関届出実験または機関承認実験とされていました。従って、規制法施行後、様々な混乱が生じていたと予想されます。今回の改正において、「Bacterial viruses」の実験区分は「クラス1」であることが明記されると同時に、別表第3に「ファージ」が明記されることで、自立的な増殖力及び感染力を保持したファージを使用しても、大臣確認は必要ないということが確定しました。