GTC On Line News No.522
2004年 6月 2日
=== 遺伝子組換え生物等規制法について・Part9 ===
〜〜〜 レトロウイルスの取扱い 〜〜〜
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前回(「GTC On Line News No.519」規制法について・Part8)のバキュロウイルス同様、告示第7号の「別表第3」にRetrovirus (Human retrovirusを除く。)という記載があります。今回は、レトロウイルスの取扱いについて説明します。
レトロウイルスは、非常に広範囲の哺乳類及び非哺乳類の細胞に感染できるという特徴から、遺伝子を導入するためのベクターとしてよく用いられます。遺伝子治療に用いられることもあります。
前回説明した様に、告示第7号の「別表第3」に記載されている 『Retrovirus (Human retrovirusを除く。) 』に関しては、『自立的な増殖力及び感染力を保持したウイルスで、その使用等を通じて増殖するもの』であっても、通常の拡散防止措置の区分及び内容で構わない、という事になります。
それでは通常の拡散防止措置の区分は何かというと、告示第7号の「別表第2」の「2」に
「Avian viruss」
「Mammalian retrovirus (Bovine immunodeficiency virus (BIV)並びに Human immunodeficiency virus (HIV)1型及び2型を除き、Human T-cell leukemia lymphoma virus (HTLV)I型及びII型を含む)」
という記載があります。従って、ここに該当する『Retrovirus (Human retrovirusを除く。) 』については、『自立的な増殖力及び感染力を保持したウイルスで、その使用等を通じて増殖するもの』であっても、「クラス2」ということになります。一般的に遺伝子を導入するために使用されているレトロウイルスベクターは、そのほとんどがここに該当します。核酸供与体の実験分類が「クラス1」または「クラス2」であれば、P2レベルの組換えDNA実験ということになります。
さて、次に『Human retrovirus』の場合はどうすれば良いか、見ていきます。この場合は、告示第7号の「別表第3」の記載からはずれますので、『自立的な増殖力及び感染力を保持したウイルスで、その使用等を通じて増殖するもの』かどうかが重要になります。
先に挙げた告示第7号の「別表第2」の「2」に
「Human immunodeficiency virus (HIV)1型の増殖力等欠損株(自立的な増殖力及び感染力を保持せず、かつ、哺乳動物等に対する病原性がない株であって、使用等を通じて自立的な増殖力及び感染力又は病原性を獲得することがないものをいう。以下同じ。)」
という記載があります。また、同じ告示第7号「別表第2」の「3」に
「Human immunodeficiency virus (HIV)1型(増殖力等欠損株を除く。)及び2型」
という記載があります。
つまり、『Human retrovirus』の中でも、
(1)HTLVの場合は、基本的に「クラス2」
(2)HIV1型の場合は、増殖力等欠損株なら「クラス2」で、それ以外は「クラス3」
(3)HIV2型の場合は、全て「クラス3」
という事になります。
ここで、宿主が「クラス2」の場合と、「クラス3」の場合では、手続きが全く異なりますので注意が必要です。前回も記載した省令第1号の第4条の例外規定である「別表第一(第4条関係)」の中に
一 微生物使用実験のうち次のイからチまでに掲げる遺伝子組換え生物等に係るもの
イ ・・・
ロ 宿主の実験分類又は核酸供与体の実験分類のいずれかがクラス4である遺伝子組換え生物等
ハ 宿主の実験分類がクラス3である遺伝子組換え生物等
ニ ・・・
という記載があります。第4条の例外規定に該当する(別表第一に記載されている)ということは、拡散防止措置の区分及び内容が定まっていないという事を意味します。つまり宿主が「クラス3」の場合は、機関承認実験ではなく、大臣確認が必要ということです。
HIV1型の増殖力等欠損株をベクターとして用いる実験は、核酸供与体の実験分類によって、P2レベルまたはP3レベルの機関承認実験になります。
また、核酸供与体としてHIVを用いる場合は、基本的に「クラス3」ですので、宿主との組み合わせで、以下の様になります。
(1)宿主が「クラス3」の場合 → 上記説明に従い大臣確認実験
(2)宿主が「クラス2」の場合 → P3レベルの機関承認実験
(3)宿主が「クラス1」の場合 → P3レベルの機関承認実験
(4)宿主が「特定認定宿主ベクター系(B2のもの)」の場合 → P2レベルの機関承認実験