GTC On Line News No.483

2004年 3月 4日
 先程送信した「遺伝子組換え生物等規制法について・Part3」の中に、間違いがありましたので差し替えます。「早見表」と「区分及び内容の一覧表」の文書は、「.doc」ではなく「.pdf」でした。棚瀬先生、御指摘ありがとうございました。
=== 遺伝子組換え生物等規制法について・Part3(訂正) ===
    〜〜〜 第二種使用等拡散防止措置 〜〜〜
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 これまで指針の下で行われていた実験のほぼすべてが第二種使用等に含まれます。しかしながら、LMOの定義から分かるように、ヒトの細胞を用いた実験や、動物細胞を培養する実験は規制の対象になりません。ただし、培養細胞にウイルスベクターを感染させる実験の場合、動物細胞は生物(LMO)として認められませんが、ウイルスの方が生物と認定され、ウイルスを「宿主」とした微生物使用実験として申請しなければなりません。
 熊本大学組換えDNA実験安全委員会(以下、安全委員会と略記)に提出された実験内容が、第二種使用等大臣確認実験に相当すると判断された場合、熊本大学長名で文部科学大臣宛てに「第二種使用等拡散防止措置確認申請書」を提出することになります。これまでの指針における大臣確認実験とほぼ同じ位置付けです。ただし、実験従事者の情報は書かなくても良くなりました。

第二種使用等拡散防止措置確認申請書(記入方法)

 ところで、大臣確認実験以外は機関実験になる訳ですが、指針における機関承認実験及び機関届出実験の規定と比較すると、その具体的な範囲を示す規定や手続は規制法の下では記載されていません。また、安全委員会や安全主任者の設置、及び教育訓練等に関しても、「規制法第3条の規定に基づく基本的事項」に努力義務として書かれているだけです。このことは、拡散防止措置に関して研究機関、そして、研究者自身の自己責任が重要視されることを意味します。
 安全委員会では、現在、独法化に向けて必要な規則改正を進めているところです。指針の法制化に伴う学内規則の改定作業はもう少し時間が必要です。そこで、移行措置として、これまで使用してきた「組換えDNA実験申請書」(様式5)と「組換えDNA実験計画書」(様式6)を引き続き使用します。もちろん、組換えDNA実験の対象になるかどうか、封じ込めのレベルはどうなるかなど、規制法等の記載に基づいて判断します。
 例えば、マウスES細胞にジーントラップベクターをエレクトロポレーションで導入する実験は、指針では動物細胞を宿主とするP2レベルの組換えDNA実験でした。しかしながら、マウスES細胞はLMOではありませんので、今この内容の実験計画書が提出された場合、「組換えDNA実験」としての審査対象にはなりません。
 ただし、マウスES細胞にアデノウイルスベクターを感染させる方法でDNAを導入する場合は、ウイルスを宿主とする「組換えDNA実験」になります。しかも、そのウイルスが自立的な増殖力及び感染力を保持している場合は大臣確認実験になります。

 さて、拡散防止措置の具体的内容を見ていくことにします。
 以下に、おおまかな考え方を箇条書きにします。
(1)まず、宿主または核酸供与体について、クラス1からクラス4までの実験分類が定義されています。それぞれ実験の拡散防止措置については、P1からP4までに対応すると考えて下さい。
(2)動物(寄生虫を除く)および植物の実験分類はクラス1です。
(3)微生物、寄生虫に関しては、その病原性および伝播性によって実験分類がクラス1〜クラス4に分かれます。
(4)宿主の実験分類または核酸供与体の実験分類のうち、いずれか高い方の実験分類(組換え動植物の場合には宿主の実験分類)がクラス1、クラス2またはクラス3の場合に、それぞれP1レベル、P2レベルまたはP3レベルの拡散防止措置とします。これまでの実験指針でP2レベルだった遺伝子改変マウスのほとんどがP1レベルになります。
(5)ただし、供与核酸が同定済核酸であり、哺乳動物等に対する病原性および伝達性に関係しないことが分かっている場合は、宿主の実験分類に従って拡散防止措置を決定します。
(6)文部科学大臣が定めた「特定認定宿主ベクター系(B2のもの)」を用いる場合は、1ランクレベルダウンすることができます。
(7)拡散防止措置の区分に関して、動物使用実験ではP1、P2およびP3レベルのことを、それぞれP1A、P2A及びP3Aと呼びます(AはAnimalの略で、P1〜P3レベルの措置に加え、逃亡防止のための措置等を意味します)。また、この他に「特定飼育区画」という区分があります。
(8)同様に植物使用実験の拡散防止措置区分は、P1P、P2P及びP3Pになります(PはPlantの略で、P1〜P3レベルの措置に加え、花粉等の飛散防止のための措置等を意味します)。また、この他に「特定網室」という区分があります。
(9)P1〜P3レベルの拡散防止措置の内容は、P2レベルにおいてエアロゾルが生じやすい操作をする時に安全キャビネットの設置が必要とされるなど、これまでの実験指針と異なるところがありますので注意が必要です。