アクティブボード・2018年 2月
     ・・・・・2018年 2月 8日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
   ⽇本放射線影響学会第60回⼤会
   2017年10月25日〜28日(千葉)
   
タイトル;低線量被ばく評価に用いるESR線量測定における医療放射線の影響.
発表者;島崎 達也 氏
   (熊本大学 生命資源研究・支援センター RI実験分野)
要旨;
 ヒト歯エナメルを用いるESR線量測定法は、個人生涯線量を求める方法として強力な測定方法である。我々は、0.2Gy以下の低線量領域の被ばく線量推定に歯エナメルESR線量測定法を用いる目的で、被ばく線量推定の可能性について検討を行っている。今回、低線量被ばくで問題となる歯エナメルに記録された医療放射線の検出とその影響について報告を行う。長崎大学により長崎原爆被ばく線量評価を目的とした長崎ESRプロジェクトにより1986年から抜歯試料収集が行われている。現時点で343本の歯が集められ約30%の歯にエナメルが十分量保持されておりESR測定が可能である。低線量領域の評価で問題となるのが、自然放射線と同様、歯科放射線による医療被ばくの寄与である。自然放射線は、代表的な家屋や抜歯試料の保管場所において自然放射線の測定を行った。医療放射線を評価するために抜歯試料から歯エナメルを分離する場合、放射線の入射方向を考慮し頬側のエナメルと舌側のエナメルの2つの部分に分けてESR測定試料とした。低線量領域のESR線量評価には、137Cs密封線源のγ線を用いた付加線量法を採用し、比較的ESR信号が大きい場合は、校正曲線を用いるキャリブレーション法で行った。ESR線量評価を行った15本の歯の頬側のエナメルから得られた線量と舌側のエナメルから得られたESR線量の比較を行った。一部の例外を除いて頬側のエナメルから得られたESR線量が比較的大きい傾向を示した。医療で使用されるX線の使用電圧は60~150kVpであるが、歯科領域では60KVp以下も使用されていた。医療放射線は、137Csγ線に比較し6~8倍のESR信号が得られる。また、7番臼歯はその厚さが1cm程度であり、その前後で約40%程度減弱する。ESR線量評価を行った15本の抜歯試料について医療放射線の影響と考えられる線量は、0.04~0.70Gy程度と推定することができた。低線量領域でのESR線量評価において医療被ばくの影響を確認するとともにその線量を推定することができた。