アクティブボード・2018年 2月
     ・・・・・2018年 2月 3日作成・・・・・
研究発表を行った学会;
   第39回日本分子生物学会年会
   2016年11月30日〜12月2日(横浜)
タイトル;Prm1ヘテロ欠損マウスからの子孫の産生.
発表者;竹田 直樹 氏
   (熊本大学 生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野)
要旨;
 マウス精子形成過程では、染色体DNAとの結合がリシンを主構成要素とするヒストンから、トランジションプロテインを経て、アルギニンに富む好塩基性タンパク質であるプロタミンに置換することが知られ、これによってクロマチンの凝縮や転写の抑制と、著しい形態の変化が生じるとされている。さらにヒトの雄性不妊疾患ではプロタミンの発現異常の報告が多い事から、不妊におけるプロタミンの関連性が示唆される。マウスはヒトと同様にPrm1とPrm2の2種類のプロタミンが存在し、我々はPrm1ノックアウトマウスを作製し、その解析をおこなった。Prm1及びPrm2のノックアウトマウスは、キメラマウスで雄性不妊であることが報告されている。そこで我々は雌性ES細胞(TT2‒XO)に対してジーンターゲティングをおこなうことでまず♀キメラマウスを得て、それを野生型♂マウスと交配させる事によってF1ヘテロ欠損マウスを作出し、解析をおこなった。その結果、Prm1ヘテロ欠損♂マウスは通常の交配では不妊であった。多くの精子に鞭毛の構造欠陥とミトコンドリア膜電位の低下が認められ、その結果として殆どの精子が不動なために受精出来ないと推測された。さらに精子頭部及び尾部に形態異常が認められ、核凝縮が不十分であることも明らかとなった。その一方で非常に弱いが運動している精子がある事から、透明帯を除いた卵子を用いて体外授精をおこなったところ、胚盤胞まで発生し、子宮移植することで産仔を得ることができた。このことからPrm1ヘテロ欠損マウスの精子はクロマチン凝縮に異常が生じるが、ゲノム情報を次世代に伝播出来得ることがわかった。