アクティブボード・2017年8月
・・・・・2017年 8月 2日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
第30回モロシヌス研究会
2017年6月23日~6月24日(グリーンピア南阿蘇、熊本)
タイトル;常染色体優性遺伝性GH1 遺伝子異常症の発症機序に関する検討 ~遺伝子置換システムを用いたヒト化GHマウスの作出と解析~.
発表者;久保 英実香 氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野)
要旨;
成長ホルモン(GH)は骨の長軸方向の成長に必須である。GH分泌不全による低身長症の一部はGHをコードするGH1遺伝子の異常に起因する。優性遺伝性GH1遺伝子異常症(本症)は、ヘテロ接合性イントロン3ドナーサイト変異により発症し、患者は野生型GH1遺伝子を1アリル保持しているにも関わらずGH分泌不全を呈する。GH分泌不全の発症機序として、変異型アリルより産生されるexon3がインフレームに欠失した変異型GHによる優性阻害効果が提唱されているが、詳細は不明である。本症の臨床像を正確に再現するモデルマウスの作出を目的とし、2アリルの内在性マウスGh遺伝子をヒト野生型、及びヒト変異型GH1遺伝子に置換した「ヒト化GHマウス」の作出を行った。本症モデルマウスはヒト本症の臨床像に酷似した軽度の成長障害を示した。また本症モデルマウスの下垂体電子顕微鏡像では、GH産生細胞における小胞体の増殖が確認された。これを変異型GHの小胞体への蓄積に伴う小胞体ストレスによるものと仮定し、小胞体ストレスを軽減するケミカルシャペロンである4-phenylbutyrateの投与を行った。しかし表現型は救済されず、本症のGH分泌不全における小胞体ストレスの関与は否定的と考えられた。