アクティブボード・2017年7月
・・・・・2017年 7月 4日更新・・・・・
研究発表を行った学会;オリジナルデータ
タイトル;超過剰排卵誘起由来マウス凍結未受精卵子を用いた体外受精.
発表者;須賀原 千明 氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 資源開発分野)
共同研究者:椋木歩、竹尾透、中潟直己
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 資源開発分野)
要旨;
生殖工学技術は、遺伝子改変マウスの作製、保存、輸送および繁殖において極めて有用な技術である。当研究室では、マウス生殖工学技術に関する研究を行い、新規技術の開発や技術の普及活動を行っている。近年、我々は、インヒビン抗血清(inhibin antiserum: IAS)およびウマ絨毛性ゴナドトロピン(equine chorionic gonadotropin: eCG)の合剤(IASe)を投与することより、1匹の雌マウスから100個以上の卵子を排卵させる超過剰排卵誘起法の開発に成功した。本技術は、従来の排卵誘起法に比べて、排卵数を増加させることから、受精卵の作製効率向上や卵子ドナーとして使用するマウス数の減少に極めて有用である。一方で、本技術において100個以上の卵子を獲得するには、4週齢においてIASeを投与する必要があるため、投与期間に関する時限的制約がある。そこで本研究では、超過剰排卵誘起法により得られる大量の卵子を活用するために、4週齢雌マウスから採取した卵子を凍結保存し、凍結融解後の生存率、体外受精率を評価することで、超過剰排卵誘起法由来卵子を用いた凍結保存法の有用性を評価した。超過剰排卵誘起法由来卵子のガラス化/加温後の生存率は、従来法(eCG単独投与)により作製した凍結卵子の生存率と同等であった。ガラス化/加温卵子を用いた体外受精の受精率は、体外受精培地にN-アセチル-L-システインを添加することで上昇した。体外受精により作製した二細胞期胚は、体外培養により胚盤胞期胚へ発生し、胚移植により産子へと発生することが確認された。これらの結果により、超過剰排卵誘起法を用いて4週齢雌マウスから大量の卵子を排卵させ、凍結保存することが可能であることが明らかになった。以上、本知見は、超過剰排卵誘起法における投与期間の時限的制約を克服する手段として卵子凍結保存法が有用であり、凍結卵子を用いた体外受精により効率的に受精卵および産子の作製が可能であることを示唆している。