アクティブボード・2017年5月
・・・・・2017年 5月 6日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
第9回トランスポーター研究会九州部会
2016年10月 1日(宮崎市)
タイトル;新規変異クレアチントランスポーターのクレアチン輸送活性低下とそのメカニズムの解明.
発表者;上村 立記 氏
(熊本大学 大学院薬学教育部 微生物薬学分野)
要旨;
【目的】クレアチントランスポーター(CRT,SLC6A8)は血液脳関門や神経細胞に発現し、中枢においてエネルギー貯蔵物質であるクレアチン(Cr)を血液から脳内神経細胞への輸送を担うことで脳内Cr供給に関与している。近年、CRT遺伝子変異は、小児の精神遅滞が主症状である脳クレアチン欠乏症候群(CCDSs)発症に関与することが報告されている。我々は日本人の重篤な小児精神遅滞患者から新規CRT変異(c.1681G>C Gly561Arg)を見出した。そこで本研究は、新規CRT変異によるCr輸送活性の変化とそのメカニズムの解明を目的とした。
【方法】ヒト繊維芽細胞は患者および健常人の皮膚から樹立した。N末端に3xFlagを付加した野生型および変異型CRTを293細胞に導入し3xFlag-CRT発現293細胞を樹立した。輸送活性は[14C]Crの細胞内への取り込み量を解析した。本実験計画は、各施設のヒト倫理委員会の承認のもと実施した。
【結果・考察】Cr輸送解析の結果、健常人由来野生型CRT発現線維芽細胞はCrを時間依存的に細胞内に取り込だのに対し、患者由来変異型CRT発現線維芽細胞における細胞内へのCr取り込みは顕著に低下していた。3xFlag-CRT発現293細胞を用いたCr輸送解析の結果、変異型CRT発現細胞における時間依存的な細胞内へのCr取り込みは野生型CRT発現細胞に比べて有意に低下していた。免疫染色法を用いたCRTの細胞内局在解析の結果、野生型CRTは主に細胞膜に局在するのに対し、変異型CRTは主に細胞内に局在していた。さらに、CRT発現解析では、野生型CRTは主に細胞膜画分の68 kDa にバンド検出されたのに対し、変異型CRTは主に粗膜画分の55, 110, 165 kDaにバンドが検出された。これら両細胞のCRTバンドは脱N型糖鎖反応によって共に50 kDaにシフトした。以上の結果から、新規CRT変異では不完全N型糖鎖修飾が細胞内局在を変化させCr輸送活性を著しく低下させることが示唆された。