アクティブボード・2017年3月
     ・・・・・2017年 3月 2日更新・・・・・
研究発表を行った学会;オリジナルデータ
タイトル;減数分裂に特異的な染色体構造因子.
発表者;石黒 啓一郎 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 染色体制御分野)
要旨;
 減数分裂における染色体分配様式は、第一分裂に還元型(半数化)の染色体分配が余分に挿入されている点が体細胞分裂と異なり、両者の本質的な違いを決定付けている。とりわけ、減数第一分裂における(1)姉妹動原体の接着制御、(2)二価染色体の形成機構、(3)染色体のaxis構造形成、(4)核膜に沿った染色体運動、これらの問題の分子機構が謎とされていた。しかしながら高等動物では、酵母、ショウジョウバエ、線虫のような順遺伝学的スクリーニング手法が容易に適用できないために、その染色体制御機構の解明は大いに攻め倦んでいた。
 我々は体細胞との決定的な違いを生み出す生殖細胞特有の染色体構造について焦点を当て研究を推進してきた。マウス生殖細胞クロマチン画分からの蛋白質複合体の精製・質量分析法およびyeast two hybrid法を駆使したスクリーニングにより、減数分裂期で特異的発現を示す新規染色体構成因子の同定を行った。その結果、減数第一分裂に特異的なセントロメア局在因子、減数分裂型の新規コヒーシン複合体、染色体末端と核膜とを繋ぐテロメア結合因子など、複数の新規染色体結合因子が同定された。奇しくもこれらはすべてデータベースに眠っていた未解析の因子であったが、CARDとの共同の下で行われた欠損マウスの解析から減数分裂における染色体動態の制御に極めて重要な役割を果たしていることが明らかとなった。これらの因子はいずれも機能を欠くと染色体分配異常や不妊を示すことから、ヒトの不妊、出生異常、染色体異数性疾患の原因となる可能性が示唆される。