アクティブボード・2017年2月
     ・・・・・2017年 2月 3日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第89回日本生化学会大会
   2016年 9月25日〜27日(仙台)
タイトル;プロスタグランジンEP4受容体を介した脂質代謝調節機構.
発表者;山田 清隆 氏
   (熊本大学 大学院生命科学研究部 薬学生化学分野)
要旨;
【背景・目的】
 脂肪細胞は、高エネルギー供給源である脂肪酸を脂質として貯蔵する機能をもつが、内分泌機能を併せ持ち、個体全体の代謝調節に重要な働きを担っている。脂肪細胞の異常な肥大は、これらの代謝調節機構に異常をきたし、肥満や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす。従って、脂肪細胞による代謝調節機構を理解することは、これら疾患の予防・治療の観点からも急務である。
 プロスタグランジン(PG)は、アラキドン酸からシクロオキシゲナーゼを律速酵素として産生される脂質メディエーターであり、特異的な受容体に作用することで様々な生理作用を引き起こす。とくに、PGE2やPGF2αが脂肪細胞の分化や脂肪分解を調節することが示唆されてきた。我々は前駆脂肪細胞株3T3-L1やマウス胎児繊維芽細胞を用いて、PGE2がEP4受容体を介して脂肪細胞分化を抑制することを見出した。しかしながら、生体内でのEP4受容体の脂肪細胞に対する作用については不明である。そこで我々は、EP4受容体欠損マウスを用い、脂肪細胞におけるPGE2-EP4受容体シグナルが個体レベルで果たす役割について検討した。
【方法・結果】
 野生型およびEP4受容体欠損マウスを通常食条件下で8週齢まで飼育し、両者を比較した結果、以下の知見を得た。① EP4欠損マウスでは、体重、白色脂肪組織(WAT)重量の増大がみられた。② EP4欠損WATでは脂肪細胞数に差を認めないが、脂肪細胞径が増大していた。③EP4欠損WATでは脂肪分解が抑制されていた。従って、個体レベルにおいては、EP4受容体は脂肪分解を亢進させ生理的な脂肪蓄積を負に抑制すると考えられた。現在、肥満病態時の脂質代謝にPGE2-EP4シグナルがどのように寄与するのか調べるため、EP4受容体欠損およびEP4作動薬投与の効果を検討中である。