アクティブボード・2017年2月
     ・・・・・2017年 2月 3日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第89回日本生化学会大会
   2016年 9月25日〜27日(仙台)
タイトル;プロスタグランジンE2による脳のオス化の分子機構.
発表者;北條 寛典 氏
   (熊本大学 大学院生命科学研究部 薬学生化学分野)
要旨;
【背景・目的】
 プロスタグランジンE2 (PGE2) は、アラキドン酸からシクロオキシゲナーゼを律速酵素として産生される最も代表的な脂質メディエーターであり、標的細胞上のEP受容体 (EP1、EP2、EP3、EP4) を介して多彩な生理機能を発揮する。視索前野はオス性行動中枢として知られ、発達期に性ステロイド刺激で産生されたPGE2が、神経回路の形成を制御し脳のオス化を引き起こす可能性が示されていた。我々は、脳のオス化を担う責任受容体を同定するためPG受容体欠損マウスを網羅的に解析し、特定EP受容体の欠損がオス性行動に影響することを発見した。そこで本研究では、本EP受容体を介した脳のオス化の分子機構を解明するために、PGE2が神経形態に与える影響とその制御機構を解析した。
【結果・考察】
 アロマターゼ神経を可視化したマウスを受容体欠損マウスと交配させ、オス特異的な神経核の形態を観察した。本EP受容体欠損はオス特有の神経形態を減弱させ、本EP受容体がオス特異的な神経回路を制御すると考えられた。さらに、マウス視索前野神経の初代培養系あるいは神経細胞株を用いて、本EP受容体シグナルが神経細胞の形態に与える影響を検討したところ、本EP受容体シグナルが神経突起伸長を促進すること、本作用が微小管束化促進タンパク質spinophilinのリン酸化依存的な局在変化を介することを明らかとした。従って、脳のオス化機構としては、PGE2が視索前野神経のEP受容体に作用して、spinophilinのリン酸化と局在変化を来たし、これが突起伸長を促してオス特異的な神経回路形成に繋がるものと考えられた。