アクティブボード・2017年1月
     ・・・・・2017年 1月 5日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第62回 日本病理学会総会
  2016年11月10日〜11日(金沢)

タイトル;悪性腫瘍患者におけるCD169陽性リンパ節洞マクロファージの臨床的意義.
発表者;大西 紘二 氏
   (熊本大学 大学院生命科学研究部 細胞病理学分野)
要旨;
 がん患者の所属リンパ節の洞マクロファージは抗原特異的な腫瘍免疫の成立に寄与していると考えられているが、その活性化状態や臨床予後を反映する分子マーカーは不明であった。私達はIFN-αで誘導した炎症性マクロファージでCD169発現が強く誘導されることを見出し、リンパ節洞マクロファージにおけるCD169発現が腫瘍免疫能や予後と相関すると予想し、CD169発現と大腸癌(83例)、悪性黒色腫(93例)、子宮体癌(79例)の臨床予後との相関を解析した。いずれの腫瘍においてもリンパ節中のCD169陽性細胞数は症例毎に大きく異なり、CD169陽性細胞が多い症例は全生存率が有意に良好であった(それぞれp = 0.0012, 0.001, 0.0098)。大腸癌と悪性黒色腫では、多変量解析にてCD169陽性率が独立した予後因子となることを明らかにした。さらにCD169陽性率と腫瘍組織内のCD8陽性Tリンパ球の浸潤数は正の相関性を示し、子宮体癌ではCD57陽性NK細胞の浸潤数と相関していた。また、リンパ節においてCD169陽性マクロファージの周囲には、CD169の発現誘導に関わるIFN-α産生細胞が分布していた。すなわち、所属リンパ節のCD169陽性マクロファージはCD8陽性Tリンパ球やNK細胞を介した腫瘍免疫を活性化している可能性が示唆され、悪性腫瘍患者の腫瘍免疫能と予後を反映する分子マーカーとして有用であると考えられた。