アクティブボード・2016年12月
     ・・・・・2016年12月 5日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第89回日本生化学会
  2016年9月25日〜27日(仙台)

タイトル;Cdc48と複数のアダプタータンパク質によるミトコンドリア融合反応制御.
発表者;江崎 雅俊 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 分子細胞制御分野)
要旨;
 Cdc48(p97やVCPとも呼ばれる)は,細胞の生存に必須なサイトゾルのAAAシャペロンである。一般的にAAAシャペロンは,ATPの加水分解によるエネルギーを利用して,基質タンパク質の高次構造をほどく作用を持ち,これによってタンパク質分解反応や複合体の解離を促進する。Cdc48は最も発現量の多いタンパク質の一つで,様々な細胞内プロセスに関与することが明らかとなっており,ユビキチン化タンパク質が主な基質である。我々はこれまでに,Cdc48がミトコンドリア融合反応に関与することを見出している。
 ミトコンドリアは融合と分裂を頻繁に繰り返し,その相反する反応の適切なバランスによって正常な形態を維持している。ミトコンドリア外膜に局在するFzo1が,外膜融合反応を直接担っている。Fzo1は,少なくとも2種類の異なるユビキチン化を受け,それぞれミトコンドリア外膜融合反応とFzo1の品質管理に関与していると考えられている。我々は,Cdc48のATPase活性変異株において,ミトコンドリア融合が阻害されること,また,Fzo1の分解反応が抑制されることを見出した。
 Cdc48には,これと複合体を形成して機能するアダプタータンパク質が存在し,これらは基質特異性などを制御している。出芽酵母で同定されている約20種類のアダプタータンパク質の機能欠損株を作製したところ,いくつかの遺伝子欠失株においてミトコンドリア形態異常が観察された。興味深いことにその表現型はアダプタータンパク質によってやや異なっていた。しがしながら,これらの単独変異株では,Fzo1の分解抑制は見られなかった。一方,別のアダプター因子の欠失株についてFzo1の分解抑制が報告されたが顕著なミトコンドリア形態異常は観察されなかった。したがってCdc48は,アダプタータンパク質を使いわけることによってそれぞれのユビキチン化Fzo1の動態制御に関与している可能性が考えられ,この作業仮説を現在検証している。