アクティブボード・2016年11月
     ・・・・・2016年11月15日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第31回日本整形外科学会基礎学術集会
 2016年10月13日〜14日(福岡)
タイトル;アンギオポエチン様因子2はIhh/PTHrPシグナルを介して軟骨細胞の肥大分化を制御する.
発表者;田上 裕教 氏
   (熊本大学 大学院生命科学研究部 分子遺伝学分野)
要旨;
【目的】内軟骨性骨化においてIhh/PTHrPシグナルは軟骨細胞の肥大分化に関与する。われわれは新生仔の骨端軟骨、特に増殖軟骨細胞層にアンギオポエチン様因子2(Angptl2)が発現し、そのノックアウトにより大腿骨長が短縮することを第30回本会にて報告したが、そのメカニズムの詳細は不明である。本研究の目的は内軟骨生骨化におけるANGPTL2の役割をin vivo及びin vitroで検討することである。
【方法】Angptl2を欠損させた新生仔とその同腹野生型マウスの骨端軟骨を用いて組織形態学的に評価した。また、Angptl2の高発現が認められた増殖軟骨細胞層のみをLaser Microdissection (LMD)法にて採取しDigital PCRを用いて解析した。in vitroでは、ATDC5細胞株にAngptl2 shRNAを導入してKnock downさせて遺伝子発現量を解析した。アルシアンブルー染色にて細胞外基質量を評価した。
【結果】Angptl2欠損マウスは野生型マウスと比較して増殖軟骨細胞層は長く(P<0.05)、肥大軟骨細胞層の長さは短縮し(P<0.05)、免疫組織染色にて10型Collagenの発現領域も狭いことが分かった。Digital PCRにて、Angptl2欠損マウスの増殖軟骨細胞層はIhhの遺伝子発現量が低下し(P<0.05)、PTHrPは亢進していた(P<0.05)。免疫組織染色においても同様の結果となった。軟骨分化誘導させたATDC5では、Col10a1のmRNA発現量がknock down細胞株で低下し、アルシアンブルー染色の染色性も低下した。IhhのRNA発現は低下し(P<0.05)、PTHrPの発現は上昇した(P<0.05)。Angptl2の受容体として知られているIntegrin α5β1とpaired immunoglobulin-like receptor (PIR)-Bの発現を確認し、in vivo及びin vitroともにIntegrin α5β1のみRNAの発現が確認された。
【結論】生体内の内軟骨生骨化において、Angptl2はIntegrin α5β1を介してIhh/PTHrPシグナルを制御することで軟骨細胞の肥大分化を正に制御することが示唆された。