アクティブボード・2016年7月
     ・・・・・2016年 7月 2日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・日本薬学会 第136年会
 2016年3月26日〜29日(横浜)

タイトル;嚢胞性線維症の原因遺伝子 CFTR の機能に依存した lncRNA の発現変動とその機能解析.
発表者;亀井 竣輔 氏
   (熊本大学 大学院生命科学研究部 遺伝子機能応用学分野)
要旨;
 嚢胞性線維症 (Cystic Fibrosis: CF) は,Cl-トランスポーターであるCFTR (Cystic Fibrosis Transmembrane conductance Regulator) の遺伝子変異により生じる常染色体劣性遺伝病である.CFは,Cl-イオンの輸送障害に伴う気道表面の水分量の減少を発端に,粘液貯留による気道閉塞と慢性的な細菌感染,及びそれに伴う炎症病態を呈する.CFでは,Cl-イオンを含む種々イオンの流出入異常に加え,CFTRの機能破綻自体による病態遺伝子の発現制御機構の変化が病態発症の原因であると考えられている.すなわち,CFTRの下流で引き起こされる遺伝子発現制御機構の理解が,CF病態発症メカニズムの解明に非常に重要である.
 そこで今回,我々はCFの遺伝子発現制御機構に関わる因子として,多様な遺伝子発現調節機構を有し,多くの疾患との関連が近年報告されているlncRNA (long non-coding RNA) に注目し,各種検討を行った.まず初めに,CFTR発現依存的なlncRNA発現変化を包括的に明らかにすべく,野生型気道上皮細胞 (16HBE14o-),CF患者由来気道上皮細胞 (CFBE41o-),野生型CFTRを導入したCFBE41o- (WT-CFTR/CFBE41o-)を用いて,全転写産物を標的にしたトランスクリプトーム解析を行った.その結果,CFTRが機能破綻したCFBE41o-においてのみ,著しく発現上昇する機能未知なlncRNA集団が存在することを明らかにした.また,これらの発現上昇したlncRNA集団の発現を,定量的RT-PCR法を用いて詳細に解析した結果,数種類のlncRNAがCFTR発現に依存して顕著に発現変化を示した.また,CF患者由来の初代培養気道上皮細胞を用いた検討においても,これらのlncRNAは同様の発現変動を示すことも明らかにした.以上の結果は,CFTRの機能に依存して発現変動し,CF病態制御に関わるlncRNAの存在を強く示唆するものである.