アクティブボード・2016年2月
     ・・・・・2016年 2月 1日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第38回日本分子生物学会年会
 2015年12月1日〜4日(神戸市)
タイトル;β細胞低酸素による転写因子HNF-4α蛋白低下メカニズムの検討

発表者;佐藤 叔史 氏
   (熊本大学 生命科学研究部 病態生化学分野)
要旨;
【背景】我々は肥満糖尿病マウス膵島が糖負荷時に低酸素に曝されること、また低酸素化されたβ細胞では種々の転写因子の発現異常が引き起こされることを見出した(JBC 2011, PLOSONE 2014)。【目的】本研究では低酸素が転写因子Hepatocyte nuclear factor (HNF)-4αのmRNA量および蛋白量に与える影響を検討し、その制御機構を明らかにする。
【方法】 MIN6膵β細胞株を5%O2で培養後、HNF-4α mRNAおよび蛋白量を定量的PCR、ウエスタンブロットで評価した。HIF-1α shRNA、AMPK活性化剤(AICAR, Metformin)およびキナーゼデッド(KD)AMPKα2変異体を用いてシグナル解析を行った。さらにシクロヘキシミド存在下でHNF-4α蛋白の分解速度に与える影響を検討した。
【結果】HNF-4α蛋白は低酸素の強さに依存して著しく低下した。HIF-1αノックダウン細胞においても低酸素によるHNF-4蛋白の低下が認められたため、HIF-1経路の関与は否定的であった。一方、AICARあるいはMetformin 添加によりHNF-4蛋白量が著明に低下した(AICAR:32.9% 減少, p<0.05、Metformin:62.8% 減少,p<0.01)が、KD AMPKα2変異体の過剰発現により部分的に改善した。またAMPK活性化時にはHNF-4α蛋白の分解速度が亢進していたが、蛋白分解阻害剤(MG132, Epoxomicin)の添加により分解は抑制された。低酸素によるHNF-4α蛋白の低下にはAMPK活性化による蛋白分解促進経路が関与していることが示唆された。【結語】低酸素はAMPK活性化を介して、HNF-4α蛋白の分解制御に関与している可能性がある。