アクティブボード・2016年2月
     ・・・・・2016年 2月 1日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第120回日本解剖学会総会 全国学術集会 (2015.3.22 神戸市)
・第38回日本神経科学大会 (2015.7.29 神戸市)
・第42回日本神経内分泌学会、第23回日本行動神経内分泌学会合同学術集会 若手シンポジウム発表 (2015.9.18 仙台市)
タイトル;視床下部神経回路発生発達過程におけるホメオボックス型転因子Dbx1の機能.
発表者;江角 重行 氏
   (熊本大学 生命科学研究部 脳回路構造学分野)
要旨;
 視床下部は、摂食行動、性行動、攻撃行動、捕食者からの逃避行動など本能行動や情動行動、社会行動に関与し、様々な領域に投射し神経活動を調節していることがわかっている (Sokolowski K and Corbin J,2012,Front Mol Neurosci)。しかしながら、これらの行動を司る神経核の発生、発達機構は未だわかっていない。ホメオボックス型転写因子Dbx1 (developing brain homeobox 1)は、終脳発生過程で一過的(E9.5-E12.5)に発現することは知られていたが、扁桃体や視床下部における神経核や回路形成における機能不明であった。そこで、我々はDbx1が視床下部における神経回路の形成に寄与すると考え、Dbx1 を視床下部領域でのみ欠損するコンディショナルノックアウトマウスを作成し、「成体の行動レベル」、「成体の組織レベル」、「胎仔脳の発生レベル」で詳細に解析を行った。その結果、成体マウスにおいて摂食異常が認められ、さらに、嗅覚系は正常であるにもかかわらず、捕食者の臭いに対する逃避行動が低下していることが明らかになった。このマウスを組織レベルで解析すると、摂食に関係する外側視床下部や弓状核において摂食に関連するペプチド陽性の神経細胞の減少が認められた。異常が認められた視床下部の領域の発生段階においてもマーカーとなる遺伝子の発現変化が認められることから、視床下部で一過的に発現するDbx1は摂食やストレス反応に関与する神経群の発生発達過程に関与していることが明らかになった。
<参考文献 Sokolowski K, Esumi S et al., Neuron, 2015,86(2):403-16>