アクティブボード・2015年11月
・・・・・2015年11月 1日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第15回 日本蛋白質科学会年会
2015年 6月24日〜26日(徳島市)
タイトル;キナーゼドメイン二量体相互作用面を標的とした阻害ペプチドの探索と評価.
発表者;雨宮 舜 氏
(熊本大学 大学院生命科学研究部 生命分析化学分野)
要旨;
チロシンキナーゼは、タンパク質のチロシン残基のリン酸化を触媒する酵素であり、細胞の増殖や分化などに関わる。多くの癌において、チロシンキナーゼの異常な発現や無秩序な活性化がみられる。受容体型チロシンキナーゼでは、細胞外ドメインにリガンドが結合することで二量体化し、細胞質領域のキナーゼドメインが互いにリン酸化し合うことで活性化する。現在、多くのチロシンキナーゼ阻害剤 ( Tyrosine Kinase Inhibitor : TKI ) は抗癌剤として使用されており、ATP結合ポケットに結合することで薬効を示すが、この結合ポケット近傍に変異が入ると薬剤に対する耐性を獲得する。本研究では、薬剤耐性変異の克服を目指して、従来の薬剤が標的とする部位ではなく、キナーゼドメイン間の相互作用面に結合し、自己リン酸化を阻害することで活性化を抑える新規阻害剤の探索を目的としている。
今回、受容体型チロシンキナーゼの1種であるFGFR1 ( Fibroblast Growth Factor Receptor 1 ) のキナーゼドメインを研究対象とし、ファージ提示法を用いて自己リン酸化を阻害するペプチドの探索を行った。スクリーニングは2段階で行った。まず、二量体形成面に変異を導入したFGFR1でスクリーニングをかけ、変異部位以外に結合するクローンをトラップする。さらに素通り画分を野生型に結合させた後、クローンを溶出させることで目的の部位に結合するクローンを得る。これにより得られたペプチドに対して、リン酸化実験、NMR、DSF、ITCなどを用いて評価を行った。