アクティブボード・2015年 8月
     ・・・・・2015年 8月 4日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第29回モロシヌス研究会
 2015年7月3日〜4日(有馬、神戸)
タイトル;Cre-driverマウスラインの樹立と解析(Cre-mERT2におけるタモキシフェンの投与方法について).
発表者;荒木 美幸 氏
   (熊本大学 生命資源研究・支援センター バイオ情報分野)
Abstract;
 遺伝子の機能解析を効率よく行うために、目的とする組織・細胞においてのみ任意の遺伝子を破壊することができるコンディショナル・ノックアウトマウスを作製するプロジェクトが全世界的に進展している。しかしながら、そこで重要な役割を演じるCre-driverマウスの整備はまだ充分ではない。我々は、『可変型遺伝子トラップ法』を開発し、データベース『EGTC』(Database for the Exchangeable Gene Trap Clones)を全世界に公開している。この可変型遺伝子トラップクローンのX-gal染色において興味深い染色パターンを示したトラップクローンのレポーター遺伝子をCre遺伝子に置換し、Cre-driver ES細胞株を樹立することで良質なCre-driverマウスの作製が可能である。
 本研究は、ノックインベクターとして核移行シグナルを付加したCre遺伝子(NCre)をスプライスアクセプターの下流に配置した「SACre」と、時期特異的にコンディショナルノックアウトを行うためにestrogen receptor ligand-binding domain containing T2 mutation(ERT2)をCre遺伝子に付加した「mERT2」を作製し、レポーターマウスであるROSA26レポーターマウスと交配して得られた産仔のX-gal染色を行い、その情報を新たなデータベースとして全世界に公開することを目的としている。
 Cre-mER T2 をノックインしたラインにおいて、染色があっても一部の細胞でしか確認されないラインが多く、Cre発現量が低い、タモキシフェンの浸透性が低い等の問題が示唆された。また、当初は腹腔内投与を行っていたが、投与期間中に死亡するマウスが多く見られたため、タモキシフェンを粉末状のえさに混ぜて与えるという方法(文献1)を採用し、条件検討を行った。条件検討にはAyu21-B165CAG Cre mERT2を使用した。このラインは発現効率が良く、mERT2の上流にCAGプロモーターが存在するため、全ての細胞でCre mERT2が発現することが期待される。今回は摂餌量、投与期間、投与終了からX-gal染色を行うまでの期間、投与量についての検討を行い、良好な結果が得られたので報告する。

文献1) Tamoxifen administration routes and dosage for inducible Cre-mediated gene disruption in mouse hearts. Andersson KB, Winer LH, Mørk HK, Molkentin JD, Jaisser F. (Transgenic Res. 2010 Aug;19(4):715-25. )