アクティブボード・2015年 6月
     ・・・・・2015年 6月 2日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第14回日本再生医療学会総会
 2015年 3月19日〜21日(横浜)
タイトル;iPS細胞を用いたニーマンピック病C型疾患モデルと薬剤開発.
発表者;曽我 美南 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 幹細胞誘導分野)
Abstract;
 ニーマンピック病C型(NPC)は、細胞内コレステロール輸送を行うNPC1あるいはNPC2分子の異常が原因の先天性リソゾーム病の1つである。コレステロール蓄積を伴う肝脾腫と進行性の神経症状を特徴とし、多くの患者は10代で死亡する難治性疾患である。本研究では、NPC患者より人工多能性幹細胞(iPS細胞)を樹立し、疾患モデル細胞の作製を行い新薬開発へ応用する事を目的とする。
 センダイウイルスベクターを用いて2例のNPC患者由来線維芽細胞からiPS細胞を樹立した。このiPS細胞を健常者由来iPS細胞とともに肝様細胞および神経前駆細胞へ分化誘導を行った。その結果、肝様細胞、神経前駆細胞への分化は健常者と同等の分化誘導効率であったがNPC由来の肝様細胞、神経前駆細胞では、コレステロールが顕著に蓄積していた。またNPCで見られる異常なオートファジーの促進も見られた事からNPC疾患モデル細胞の構築が可能となった。
 次にこの細胞を用いてコレステロール蓄積を阻害する化合物を選別したところ、新規化合物を見いだした。NPC患者由来肝様細胞、神経前駆細胞への処理ではコレステロールの蓄積が減少し、異常オートファジーも改善した。更にNPCモデルマウスへ投与を行った結果、血清中のトランスアミラーゼが減少し、肝臓のコレステロールの値も減少し、生存期間も有意に延長した。以上の結果よりiPS細胞由来の疾患モデル細胞は新規の治療効果のある化合物を同定する系として有用である。