アクティブボード・2015年 3月
     ・・・・・2015年 3月 3日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第37回日本分子生物学会年会
 2014年11月25日〜27日(横浜)
タイトル;SUMO依存型ユビキチンリガーゼRNF4とトポイソメラーゼ反応阻害によるM期染色体の損傷応答に関する研究.
発表者;湯浅 映里 氏
   (熊本大学 大学院自然科学研究科 斉藤研究室)
Abstract;
Topoisomerase(Topo)は、DNAのひずみやねじれを解消する酵素であり、転写、複製、染色体の凝縮と分離に必須である。Topoは、DNA二重鎖の一方のみを切断するTopoIとDNAの二重鎖を切断するTopoIIに大きく分けることができるが、それぞれに特異的な阻害剤も知られている。これまでに我々は、TopoII-DNA中間体を安定化させてTopoIIを阻害する薬剤EtoposideをHela細胞に処理することで、M期染色体にSUMO2/3、Ubiquitin、Sumo依存型ユビキチンリガーゼRNF4が集積することを見出している[1]。同様のことがTopoI-DNA中間体を安定化させるTopoI阻害剤Camptothecinによっても観察されている。こうしたTopo阻害剤におけるRNF4を介するSUMO2/3とUbiquitinの応答はM期において染色体上に生じたDNA損傷を修復あるいは消去しようとする応答と考えられる。本発表では、EtoposideとCamptotethinを処理した際に観察されたM期染色体上におけるRNF4-SUMO-Ubiquitin修飾を細胞生物学および生化学的な手法を用いて解析し、それぞれの因子が時空間においてどのように変動するのかを明らかにしたので報告する。また、近年、M期におけるDNA損傷応答がテロメアの過剰融合を起こすことが報告され、損傷部位の修復反応が有糸分裂時に起こらないことの生理的な説明として注目を集めている(Orthwein et al. Science, 2014)。こうした知見を勘案して、SUMO2/3、Ubiquitin、RNF4の三者がM期染色体におけるTopoisomeraseとDNAの中間体形成に伴う損傷の解消に関与するモデルを提案したい。
[1]Saito et al. The SUMO-targeted ubiquitin ligase RNF4 localizes to etoposide-exposed mitotic chromosomes:implication for a novel DNA damage response during mitosis. Biochem Biophys Res Commun. 447:83-88 (2014)