アクティブボード・2015年 2月
・・・・・2015年 2月16日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・オリジナルデータ
タイトル;円口類ヌタウナギ(Eptatretus burgeri)血清に含まれる抗原認識分子の同定.
発表者;有村 憲哉 氏
(熊本大学 大学院自然科学研究科 高宗研究室)
Abstract;
最も原始的な脊椎動物の一種である円口類ヌタウナギ(Eptatretus burgeri)では、原始的抗原受容体である可変性リンパ球受容体(variable lymphocyte receptor: VLR)や自然免疫に関わる各種補体成分の存在が報告されているが、異物認識や排除のための分子機序については不明な点が多い。本研究では、ヌタウナギにおけるパターン認識分子(pattern-recognition molecule: PRM)を単離するためにN-acetylglucosamine (GlcNAc)-agaroseカラムを使用し、同種血清より4種のタンパク質(19, 26, 27, および31 kDa)を単離した。これらをSDS-PAGE、Blue Native-PAGE、及びそれぞれを併用した二次元電気泳動により解析した結果、19 kDaと31 kDa、および26 kDaと27kDaのタンパク質がdisulfide結合を介してヘテロ二量体を形成し、さらにそれらが会合することで約1,200 kDaの巨大な複合体を形成しているという構造的特徴が明らかになった。これら4種のタンパク質の実体を明らかにするために、プロテアーゼ処理後の分解産物についてアミノ酸配列解析を行ったところ、31 kDaタンパク質がVLR-Bに高度に保存された配列を有することが明らかになった。この複合体のGlcNAc-agaroseへの結合はEGTAにより阻害されないことから、その糖鎖認識・結合様式はCa2+依存的な糖鎖認識に特徴付けられるC-type lectinのものとは異なるものと考えられる。この複合体で大腸菌を処理したところ、マクロファージによる貪食活性が亢進したことから、これら複合体構成分子は病原性微生物の認識、および排除に寄与していることが明らかになった。