アクティブボード・2015年 2月
・・・・・2015年 2月 6日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第37回日本分子生物学会年会
2014年11月25日〜27日(横浜)
タイトル;分子シャペロンDnaKを標的とする低分子化合物を用いた新たなバイオフィルム阻害法の開発.
発表者;有田(森岡) 健一 氏
(熊本大学 発生医学研究所 分子細胞制御分野)
Abstract;
バイオフィルムは固体表面に形成される微生物のコミュニティであり、バイオフィルム内部の細胞が抗生物質や宿主免疫機構に耐性を示すことで慢性感染症の原因となることが問題となっている。我々は、大腸菌一遺伝子欠損株ライブラリー(KEIOコレクション)を用いた網羅的な解析から、タンパク質の品質管理を担う分子シャペロンDnaKがバイオフィルム形成に重要な役割を果たすことを見出した。本研究では、大腸菌をモデルとして、DnaKの機能を阻害する化合物によってバイオフィルム形成を抑制できるかを検証した。これまでに報告されているDnaK阻害剤の中から、Myricetin、Telmisartan, Pancronium bromide、Zafirukastを選択し、大腸菌K-12株のバイオフィルム形成に与える影響を調べた。その結果、天然フラボノールの一種であるMyricetinが増殖は阻害せず、濃度依存的にバイオフィルム形成を阻害すること(IC50=46.2 μM)を発見した。透過型電子顕微鏡により細胞外構造体の産生を観察したところ、Myricetinを添加した場合にはdnaK欠損株と同様に、バイオフィルム形成に重要な細胞外アミロイド線維curliの産生が抑制されていることが分かった。また、1.Myricetin添加時には温度感受性を示す、2.細胞骨格タンパク質であるFtsZのリング構造が異常になり細胞が長くなる、3.熱ショック転写因子であるσ32 の量が増加するなど、dnaK欠損株と同様の表現型が観察されたことから、MyricetinはDnaKの機能を阻害することでcurliに依存したバイオフィルムの形成を抑制することが示唆された。また、メチシリン耐性臨床分離株を含む黄色ブドウ球菌に対しても、Myricetinが最少生育阻止濃度以下の濃度でバイオフィルム形成を阻害することを見出した。以上より、Myricetinはグラム陰性菌だけでなく、グラム陽性菌のバイオフィルムに対しても有効であり、DnaKが抗バイオフィルム薬の標的となりうることが示された。