アクティブボード・2014年12月
     ・・・・・2014年12月 2日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第37回日本分子生物学会年会
 2014年11月25日〜27日(横浜)
タイトル;癌組織における細胞形態の定量的解析.
発表者;安田 洋子 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野)
Abstract;
 細胞核内は、クロマチンの高次構造や遺伝子の発現制御に関わっている。特に、疾患細胞の核内は、ゲノムならびにエピゲノム異常の蓄積により遺伝子の発現様式が変化している。臨床病理では、がん診断において核形態の変化を指標の一つとして採用している。しかし、核形態の判定は目視で行われており、観察者の経験に依存する側面があることから、細胞核形態の定量解析により客観的評価法を確立することは医療への貢献に繋がると考えられる。 細胞核形態の定量解析の確立にあたり、我々は、ヒト由来の正常組織とがん組織画像を用いて、両者を判別し得る細胞核形態の指標を検索すること、また、多目的パターン認識プログラムwndchrmにより、組織細胞の状態を評価することを目的とした。 まず、染色されたヒト胃組織およびヒト乳腺組織アレイの光学顕微鏡画像を取得後、細胞イメージ解析システムCELAVIEWを使用して細胞核の形態解析を行い、正常組織およびがん組織間で定量値を比較した。その結果、ヘマトキシリン染色強度、核の面積、細胞の重積性は、がん組織において優位に高値を示し、がん細胞の客観的評価の指標となる可能が示された。wndchrm解析では、正常組織およびがん組織画像ごとにフォルダを作成し、まず、トレーニングを行った。トレーニングは、フォルダごとの画像特徴を算出して座標上にプロットする作業で、テスト解析の分類精度や類似度の測定の基となる。 テストとして交差検定を複数回繰り返し、分類の正解率を調べた。その結果、がん組織画像の推定は、平均80%以上の正解率であった。さらに、系統樹による画像の類似度を表したところ、がん組織画像は正常組織画像から離れてクラスターを形成していた。このことから、wndchrm解析は、がん組織画像を比較的高精度に判別することが示された。 細胞形態を定量化することによりがん細胞の客観的評価が可能であることが示唆された。