アクティブボード・2014年12月
・・・・・2014年12月 1日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第37回日本分子生物学会年会
2014年11月25日〜27日(横浜)
タイトル;毛髪中microRNA発現の臨床的意義の検討.
発表者;神人 正寿 氏
(熊本大学 大学院生命科学研究部 皮膚病態治療再建学分野)
Abstract;
様々な疾患においてmicroRNA のバイオマーカーとしての有用性が注目されている。最近、毛髪中にもmicroRNAが安定して存在する事が報告された。しかし、その臨床的な意義についてはこれまで検討されていない。そこで我々は血管の狭小化のために採血が難しい病気として知られる全身性強皮症において、毛髪microRNAが診断に有用かどうか調べた。11人の強皮症患者と13人の対照群から血液・毛根・毛髪を同時に採取し、市販のキットを用いてmicroRNAを抽出してPCR arrayやreal-time PCRで発現解析を行った。頭の2ヶ所から採取した同一人由来のサンプル間のmicroRNA発現量の違いは2倍以内に収まっており、発現量にはある程度の再現性があると判断した。個々人での血清および毛根・毛髪のmicroRNA発現量には基本的に強い相関(r>0.6)は無かったため、独立したマーカーとして機能すると考えられた。また、対照群と強皮症患者の血清・毛根・毛髪でのmiR-196a発現を比較したところ、過去の報告通り血清では対照群と強皮症で差は無かったが、強皮症の毛根ではわずかに減少し、毛髪では有意に減少していた。毛髪中miR-196a濃度でROC曲線を作成したところ曲線下面積は0.75であり、対照群と強皮症患者を区別する診断マーカーとして有用であることが示された。毛髪は血液に比べより簡便に採取できるため、毛のmicroRNA発現量が疾患マーカーに応用できればより非侵襲的に診断や病勢の評価を行うことが出来る可能性があると考えられた。