アクティブボード・2014年11月
     ・・・・・2014年11月 4日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・Towards precision medicine Phenotyping human disease in mice
 2014年10月20日〜23日(Canberra, Australia)
タイトル;Effects of removing cumulus cells with hyaluronidase on viability, fertilizing and developmental ability of fresh and cryopreserved mouse oocytes.
発表者;椋木 歩 氏
   (熊本大学 薬学部 創薬・生命薬科学科4年、生命資源研究・支援センター 資源開発分野)
Abstract;
【目的】近年、遺伝子改変マウスの作製促進に伴い、マウスバンクの重要性が高まっている。マウスバンクでは、様々な生殖工学技術が用いられており、その中の1つである卵子の凍結保存技術を用いることで、時間的制約にとらわれずに体外受精を行うことができる。凍結を行う際、排卵された卵子の周りを取り囲む卵丘細胞は操作の妨げになるため、あらかじめ除去する必要がある。卵子-卵丘細胞複合体(COCs)の結合にはヒアルロン酸が関与しているため、卵丘細胞除去にはヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼが汎用されている。過去に、ヒト卵子にヒアルロニダーゼ処理を行うことで、卵子の生存率・受精率・発生率が低下することが報告されている。しかし、ヒアルロニダーゼ処理がマウス卵子に及ぼす影響についてはよく分かっていない。そこで本研究では、ヒアルロニダーゼ処理がマウスの新鮮卵子・凍結卵子に及ぼす影響について検討した。
【方法】卵子及び精子は、C57BL/6マウスの成熟雌及び成熟雄から採取した。卵子及び精子の採取・培養、卵子の凍結保存は定法に従い行った。Modified human tubal fluid (mHTF)中に採取したCOCsを入れ、ここへウシ由来ヒアルロニダーゼを最終濃度が0.1%になるように添加した。卵丘細胞を除去した後、体外受精及び凍結保存を行った。体外受精及び融解後回収した卵子の洗浄はmHTF、培養はPotassium simplex optimization medium (KSOM)中でそれぞれ行い、卵子の生存率・受精率・発生率を評価した。また、ヒアルロニダーゼ処理が透明帯に及ぼす影響を検討するために、ヒアルロニダーゼ処理後、Tyrode溶液処理により透明帯を除去した卵子における受精率も同時に検討した。
【結果・考察】ヒアルロニダーゼ処理を5分以上行った新鮮卵子において、受精率・発生率は顕著に低下した。また、凍結卵子においても5分以上ヒアルロニダーゼ処理を行うことにより、融解後の生存率・受精率・発生率は顕著に低下した。透明帯除去卵子においては、10分間ヒアルロニダーゼ処理を行った卵子においても、ヒアルロニダーゼ未処理の卵子と同等の受精率を得ることができた。以上、本知見により、長時間のヒアルロニダーゼ処理は卵子の透明帯構造を変化させ、生存率・受精率・発生率の低下を引き起こすことが明らかになった。