アクティブボード・2014年 7月
・・・・・2014年 7月 2日更新・・・・・
・第61回日本実験動物学会総会
2014年5月15日〜17日(札幌)
タイトル;可変型遺伝子トラップクローンデータベース[EGTC]の開発と解析.
発表者;荒木 正健 氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター バイオ情報分野)
Abstract;
【目的】我々は、一度樹立したトラップアレルのレポーター遺伝子を任意の遺伝子に置換することが出来る可変型遺伝子トラップシステムを開発し、データベースEGTCを公開している。プロモータートラップを行っており、ES細胞で発現している遺伝子しかトラップできないという制約があるため、EGTCでトラップしている遺伝子に機能的な偏りが無いかどうかを検討した。
【方法】Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG)を用いた解析、およびGene Ontology (GO) classificationを用いた解析を行った。
【結果および考察】EGTCクローンの中で、800クローンがタンパク質をコードしているKEGG geneをトラップしていた。その中の289遺伝子はKEGG Pathway情報を持っていた。First level categoryで一番多かったのは[6 Human Disease]であり、中でも癌との関連が示唆された。Second level categoryで一番多かったのは[3.2 Signal transduction]であり、ES細胞の未分化状態を維持するためにSignal transductionパスウェイが重要であることを示唆している。またEGTCクローンは、ほとんど全て(41/43)のSecond level categoriesをカバーしていた。従って、トラップした遺伝子の中で、遺伝子機能の特別な偏りは無いと考えられる。GO解析においては、3種類のカテゴリー全てにおいて、second level categoryのトップからふたつまでは、EGTCマウスラインとRefSeq遺伝子で完全に一致していた。さらに頻度1%以下のsecond level categoryについても、EGTCでトラップした遺伝子とRefSeq遺伝子は、ほぼ完全に一致した。これらの結果は、EGTCマウスラインがトラップした遺伝子の機能的な分布は、マウスゲノム全体におけるRefSeq遺伝子の機能的な分布と似ていることを示している。
【結論】EGTCマウスラインがトラップしている遺伝子は、幅広い分野のRefSeq遺伝子をカバーし、機能的な偏りは特に無いことを確認した。