アクティブボード・2014年 3月
     ・・・・・2014年 3月 3日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第56回日本糖尿病学会年次学術集会
 2013年 5月16日〜18日(熊本)
タイトル;ヒトおよび動物におけるアルドステロン過剰状態と耐糖能障害発症の関連.
発表者;後藤 理英子 氏
   (熊本大学 大学院生命科学研究部 代謝内科学分野)
Abstract;
【目的】原発性アルドステロン症(PA)自験58例における耐糖能異常の頻度と特徴について解析、さらにAld過剰状態モデルラットにおける耐糖能障害とその発症機序について検討した。
【方法】PAと診断した患者58例の耐糖能を解析。うち42例についてPAの局在診断別に片側腺腫群、両側過形成群に分け、75gOGTTを施行。さらに片側副腎摘出術もしくはエプレレノン(E)投与を行った13例について治療開始前および6ヶ月後にグルコースクランプおよびOGTTを施行し比較した。次に、Sprague-Dawleyラットを(1)1%NaClを飲水させた群(C群)(n=6)、(2)1%NaClを飲水させ、Aldを0.75μg/hで皮下投与した群(A群)(n=6)、(3)(2)に加え、100 mg/kg/dayのエプレレノンを経口投与した群(E群)(n=6) 、の3群に分け、28日間継続投与、腹腔内ブドウ糖負荷試験 (ipGTT)を施行、膵組織の変化、膵臓RT-PCRを検討した。
【結果】PAにおける耐糖能異常の頻度は76%。過形成群では耐糖能異常を合併する頻度が腺腫群に比して高く(100% vs 62%)、 OGTTの結果HOMA-IR、ΣIRIが有意に高かった(1.18 vs 2.12,211.6 vs 334.8)。片側副腎摘出群では治療後insulinogenic index(I.I.)が有意に改善(0.53 vs 0.86)、グルコースクランプ法によるM/I値は有意差なし。ラットではipGTT時の血糖がAld群でその他の群と比較して高値となる傾向を認め(30分値C群198,A群220,E群192 mg/dL)、A群とE群でI.I.が有意に低下(C群1.0,A群0.26,E群0.25(比) )。組織学的検討において膵島面積/膵実質面積比は(C群2.2, A群0.6, E群2.6) とA群で有意に縮小、E群で回復。膵島の線維化は、A群に比しE群で軽減。 膵RT-PCRではXBP-1 (C群1.90,A群2.55,E群0.28 )、ERK-1(C群1.12,A群1.15,E群0.28 )の発現量がE群で減少、 LC3 (C群0.39,A群0.20,E群0.43 )、PDX-1(C群2.83,A群0.05,E群0.27 )の発現量がE群で回復。さらに、膵臓のソマトスタチン(C群0.25,A群1.26,E群4.95 )の発現量はE群で増加、グルカゴン(C群5.20,A群4.42,E群2.77 )の発現量はE群で低下した。
【結論】PAにおける耐糖能異常の頻度は76%と高く、インスリン分泌機能障害の可能性が示唆された。Ald投与ラットでは、インスリン分泌障害・膵β細胞死が関与したと考えられる耐糖能障害を認め、Aldは膵島を障害し、Eは膵保護作用を示すと考えられた。その分子メカニズムとしてAldは膵島細胞のオートファジーを阻害することにより小胞体ストレスを増大し、Eは小胞体ストレスを軽減し、膵β細胞機能低下や細胞死を抑制する可能性が示唆された。さらに,E群でインスリン分泌が低下しているにも関わらず血糖が改善した機序として、ソマトスタチン分泌亢進によるグルカゴン分泌低下が関与している可能性が示唆された。