アクティブボード・2014年 2月
     ・・・・・2014年 2月 7日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第36回日本分子生物学会年会
 2013年12月 3日〜 6日(神戸)
タイトル;低分子化合物スクリーニングに基づいた機能的な膵β細胞誘導研究.
発表者;坂野 大介 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 多能性幹細胞分野)
Abstract;
 一型糖尿病の治療には膵臓や膵島の移植が有効な治療法であるが、ドナー不足が深刻な問題となっている。これらの問題を解決する手法としてES・iPS細胞からの膵β細胞誘導法の確立があげられる。膵β細胞をin vitroで誘導することは移植治療による糖尿病治療に貢献するだけではなく、膵臓発生メカニズムを解明することで糖尿病治療薬の開発にも貢献できると考えている。
 最近我々は、マウスES細胞を用いて低分子化合物を用いた大規模スクリーニングを試みた。低分子化合物を用いる利点として標的となる分子が容易に特定でき生化学的手法による解析にいち早く取り組めるからである。さらに我々はスクリーニングのための膵臓分化培養法として従来の支持細胞を用いる方法ではなく完全人工基質であるナノファイバーを用いた。このことにより。支持細胞からの細胞分化への影響を除き、より正確に化合物による影響をとらえることができた。
 スクリーニングの結果としては、1300の低分子化合物から10の膵β細胞分化を促進するヒット化合物を得た。10の化合物は、その作用機序から数個のグループに分類することができた。膵臓分化において膵前駆細胞から内分泌前駆細胞への分化を促進しβ細胞数を増加させる化合物やβ細胞の成熟化を促進し、グルコース濃度依存的にインスリンを分泌させる機能の獲得に関与する化合物を同定した。現在、誘導した細胞の機能評価を糖尿病モデルマウスであるAKITAマウスで調べているところである。