アクティブボード・2014年 1月
・・・・・2014年 1月 7日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第36回日本分子生物学会年会
2013年12月 3日〜 6日(神戸)
タイトル;Polycomb group body の形成を阻害する天然化合物のスクリーニングと解析.
発表者;平田 久峰 氏
(熊本大学 大学院自然科学研究科 RNA分子生物学研究室)
Abstract;
真核細胞の核内には、主に転写の抑制に働く核内構造体である polycomb group body (PcG body) が存在している。PcG body は HeLa 細胞では一つの核当たり 4~8 個存在し、BMI1などいくつかの PcGタンパク質からなる複合体 PRC1 (Polycomb Repressive Complex 1) と複数の転写調節を受ける標的遺伝子群が集積している。PcG body は、細胞や組織の分化などにおいて重要な機能を持つ事が知られているが、その詳細な形成機構や機能については未だ不明な点も多く残されている。
我々はPcG body の形成機構や機能の解明を目的とし、PcG body の形成に影響を与える放線菌培養上清サンプルのスクリーニングを行った。スクリーニングは PcG body の構成因子の一つである BMI1 の HeLa 細胞における局在を、蛍光抗体染色により可視化することにより行った。 2,156上清サンプルをスクリーニングした結果、PcG body の形成を阻害する32種類の候補上清サンプルを得た。これらの候補上清サンプルは、他の PcG body 構成因子 RING1B の PcG body への集積も阻害した。BMI1 や RING1B の局在変化には、PcG body としての顆粒状局在が無くなることに加え、核小体周辺部や核膜に局在化するもの、PcG body と比較してより小さい斑点状の局在が核全体に観られるものなど多様であり、形成阻害のパターンが複数あると考えられた。次に、転写状態の変化を観察するために、BrU 取り込み実験を行った。その結果、スクリーニングで得られた32種の候補上清サンプルのうち29種で転写が阻害されていた。転写阻害作用を持つ化合物で処理した細胞では PcG body が観られた事から、転写阻害作用が PcG body の形成阻害に直接作用している訳では無いと考えられた。また、Western blot解析によって、数種の候補上清サンプルが、リン酸化など、BMI1 タンパク質の修飾に影響を与えている可能性が考えられた。
今後は、候補上清サンプルに含まれる活性化合物を精製し、MS解析によりその構造を調べる予定である。