アクティブボード・2013年12月
     ・・・・・2013年12月 7日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第36回日本分子生物学会年会
 2013年12月 3日〜 6日(神戸)
タイトル;呼吸鎖複合体III形成におけるAAA分子シャペロンBcs1pのN末端の機能解析.
発表者;澤村 理英 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 分子細胞制御分野)
Abstract;
 Bcs1pは、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のミトコンドリア呼吸鎖複合体IIIの会合に必須なAAAファミリータンパク質に分類される分子シャペロンである。特に、呼吸鎖複合体IIIの活性中心サブユニットの一つであるリスケ鉄硫黄タンパク質(Rip1p)の未成熟複合体IIIへの組込みに必須であると考えられている。Bcs1pはミトコンドリア内膜に局在する、一回膜貫通タンパク質である。複合体IIIの会合に必須なAAAドメインを含むC末端領域はマトリクス側に位置している。一方、膜間部側に位置するN末端領域の重要性については明らかになっていない。本研究の目的は、このN末端領域の複合体III会合に対する影響について明らかにすることである。
 まず、N末端領域において、どの残基がBcs1pの機能に重要であるか検討するため、膜間部側44残基の様々な欠失変異株Bcs1pを発現する酵母株を作製した。その結果、38-40残基を欠失させたBcs1pを持つ酵母は、Bcs1p欠損株と同様に呼吸能不全を示し、その中でも特にLeu38欠損が最も呼吸能低下を示した。さらに、この疎水性残基であるLeu38を他のアミノ酸に置換したところ、Aspといった親水性アミノ酸に置換した場合において、呼吸能不全が顕著であった。これら呼吸能不全を示した変異株のミトコンドリアを単離し、Blue Native-PAGEで複合体III形成への影響を検討したところ、未成熟複合体IIIの蓄積がみられた。さらに、ミトコンドリア内でのRip1pの局在を検討したところ、呼吸能不全変異株のRip1pはマトリクスに局在していることが分かった。
 これらの結果から、Bcs1pのN末端領域は、複合体III会合におけるRip1pのマトリクスから未成熟複合体IIIへの移動・会合に重要であることが示唆された。