アクティブボード・2013年11月
     ・・・・・2013年11月 3日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第13回日本内分泌学会九州地方会
 2013年 8月24日(那覇)
タイトル;常染色体優性遺伝形式を示すGH1遺伝子異常症における小胞体ストレス応答の関与.
発表者;有安 大典 氏
   (熊本大学 生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野、
東京都立小児総合医療センター 内分泌代謝科)
Abstract;
【背景】常染色体優性遺伝形式のGH1遺伝子異常症は、GH1遺伝子intron3のドナーサイト変異により生じ、変異型アレルからexon3がin frameに欠失した変異型GHが産生される。1アリルが正常であるにもかかわらずGH分泌不全が生ずる原因として、変異型GHによる優性阻害効果が提唱されているが、分子生物学的詳細は不明である。
【目的】変異型GHによる小胞体ストレス、下垂体前葉GH産生細胞のアポトーシスが優性阻害効果に寄与するという仮説のもと、in vitroでの検証を目的とした。
【方法】野生型GH及び変異型GHの細胞内局在を評価するため、一過性発現による免疫染色を行った。また、CMVプロモーター下に野生型GH1遺伝子を、ドキシサイクリン誘導発現型プロモーター下に変異型GH1遺伝子をつないだコンストラクトをGH4C1細胞に二重安定発現させ、変異型GHの誘導が野生型GH分泌に及ぼす影響、変異型GHによる小胞体ストレス応答、アポトーシスについて検証した。
【結果】免疫染色では、野生型GHが小胞体を経てゴルジ体に運ばれていたのに対し、変異型GHは小胞体にとどまっており、小胞体ストレスを引き起こすという仮説に矛盾しない結果であった。また、誘導発現株において、変異型GHの誘導により、野生型GH分泌量の低下、小胞体の膨化及び増殖、小胞体ストレス応答主要3系統PERK, ATF6, IRE1経路の活性化、caspaseの活性化が認められた。caspase活性化は活性型XBP1の過剰発現による小胞体ストレスの緩和により救済された。
【考察】小胞体ストレスおよびアポトーシスが本疾患の優性阻害効果に寄与する可能性が示唆された。ヒト野生型および変異型GH1遺伝子によるノックイン置換マウスを用いて現在in vivoで検証中である。