アクティブボード・2013年 4月
・・・・・2013年 4月4日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第35回日本分子生物学会年会
2012年12月11日〜14日(福岡)
タイトル;TtrおよびRbp遺伝子座のダブルヒト化による血中ヒトTTRの増加.
発表者;李 正花 氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野)
Abstract;
家族性アミロイドポリニュ−ロパチ−(FAP)は常染色体優性遺伝性の全身性アミロイドーシスであり、トランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異によって引き起こされる。TTRは主に肝臓で発現し、4量体として血中に分泌され、甲状腺ホルモンやレチノール結合タンパク(RBP)と結合し、T4, T3, レチノール等の運搬に関与する。FAPは、20-45歳で発症するが、10-20年後にアミロイド沈着による心不全、腎不全及び栄養障害で死亡する。有効な治療法として肝臓移植以外になく、新たな治療法の開発が課題である。これまでの研究で、我々が開発した可変型相同組換え法を用いてマウスTtr遺伝子をヒト正常(Val30)及び変異TTR(Met30)遺伝子で置換したヒト化マウス(TtrhVal30およびTtrhMet30)を作製している。しかし、ヒトTTRはマウスレチノール結合タンパク(Rbp)との結合親和性が低く、血中において不安定となり、病態解析および治療法の開発においてTtr遺伝子をヒト遺伝子で置換しただけではよいモデルではないことが示唆された。そこで、マウスRbp4遺伝子を完全破壊(Rbp4-/-)し、ヒトRBP4遺伝子で置換したマウス(Rbp4hRBP/hRBP)を作製した。このマウスを、すでに作製済みのTtr遺伝子のヒト化マウスと交配し、Ttr及びRbp4遺伝子がともにヒト化されたマウス(Rbp4hRBP4;TtrhVal30及びRbphRBP4; TtrhMet30)を作製した。このダブルヒト化マウスを用いて、分子生物学的・生化学的解析を行ったところ、ヒトRBP4蛋白の存在により血中TTR蛋白のレベルが上昇していることが分かった。このことは、ヒトTTRがヒトRBP4と結合することで4量体の安定性が高くなること、ダブルヒト化マウスが病態や治療法開発のためのよりよいモデルであることを示唆している。