アクティブボード・2013年 3月
     ・・・・・2013年 3月 2日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第35回日本分子生物学会年会
 2012年12月11日〜14日(福岡)

タイトル;Rad18とChk2の連携による、発がんの抑制.

発表者;田上 友貴 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 損傷修復分野)
Abstract;
 Rad18は、PCNAをモノユビキチン化することにより損傷乗越え複製を制御する。我々はRad18欠損マウスの発がんについて調べた。野生型マウス、Rad18欠損マウスはともに12ヵ月齢までは発がんがみられなかったが、18ヵ月齢で野生型マウス、Rad18欠損マウスは、それぞれ15%および31%の自然発がんがみられた。このため、Rad18欠損マウスは野生型マウスに比べて2倍の自然発がん率であった (P<0.05)。がんの種類のスペクトラムも大きく異なっていた。細胞周期制御機構が、がん抑制において果たしている役割をさぐるため、Chk2・Rad18 2重欠損マウスを作成した。Chk2は細胞周期を制御するリン酸化酵素である。12ヵ月齢のChk2欠損マウスで発がんはみられなかったのに対して、Chk2・Rad18 2重欠損マウスでは20%にリンパ腫がみられた(P<0.05)。次に、マウスの背にUVを照射することにより、皮膚がんの形成を調べた。皮膚がんの形成頻度は、野生型マウスとRad18欠損マウスで有意な差がみられなかったが、Rad18欠損マウスは野生型マウスよりも早く皮膚がんが形成される傾向がみられた。Chk2欠損マウスは、野生型マウスに比べて早く皮膚がんが形成された(P<0.01)。Chk2欠損マウスとChk2・Rad18 2重欠損マウスでは、皮膚がんの形成頻度に有意な差はみられなかったが、Chk2・Rad18 2重欠損マウスで悪性度の高い扁平上皮がんが多くみられ(P<0.05)、早く皮膚がんが形成される傾向がみられた。このため、Chk2遺伝子の欠損によりRad18欠損マウスの発がんが悪化することが示された。Rad18とChk2は、発がんの抑制に関与していると結論した。